年間ドラマ視聴率「ベスト10」 TBS「日曜劇場」がトップ4独占 強さの秘密は“1話4000万円”の圧倒的制作費
若者が観ない作品は?
スポンサーが強いので制作費は業界トップの1話当たり推定4000万円。他局は平均3000万円。2500万円以下でつくる社もあるから、差が大きい。
もちろん制作力も高い。TBSの精鋭がつくっているが、さらにドラマづくりの名門である系列のTBSスパークル(旧ドリマックス・テレビジョン)が加わっている。スタッフの層が厚い。
【5】「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」(テレビ朝日・7月期)=4・7%(8・5%)
【6】「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ・4月期)=4・6%(7・7%)
【7】「119エマージェンシーコール」(フジテレビ・1月期)=4・6%(7・6%)
「大追跡」はテレ朝の水曜21時枠で10年ぶりに生まれた新作刑事ドラマ。これまでは「刑事7人」や「科捜研の女」が放送されていた。
主人公は警視庁刑事部SSBC強行犯係の伊垣修二(大森南朋)と名波凛太郎(相葉雅紀)、そして警視庁捜査一課主任の青柳遥(松下奈緒)の3人。異例だが、うまく噛み合っていた。
特に良かったのは名波役の相葉。捜査一課長の八重樫雅夫(遠藤憲一)が捜査などを面倒くさがると、叔父で内閣官房長官の久世俊介(佐藤浩市)の名前を出して脅すのだ。相葉本人のキャラクターに合っていた。
5位の「大追跡」と6位の「続・続・最後から二番目の恋」には共通点がある。コア視聴率(13〜49歳の個人視聴率)が低い。「大追跡」の場合は中高年が刑事ドラマを好み、若年層は敬遠するから。「続・続・最後から二番目の恋」は主人公の吉野千明(小泉今日子)と長倉和平(中井貴一)が定年世代であるためである。
「最後から二番目の恋」は2012年に始まり、今回は11年ぶり。フジは26年にもかつての大ヒット作の続編を放送する。
7位の「119エマージェンシーコール」では横浜市消防局の指令管制員たちを描いた。119番通報を受ける部署である。主人公は管制員の粕原雪(清野菜名)。幼いころに自宅が火事になり、指令管制員の声に救われたことから、自分もこの道を選んだ。胸を打つ一級品のヒューマン・エンターテイメントだった。
【8】「特捜9 final season」(テレビ朝日・4月期)=4・5%(8・0%)
【9】「プライベートバンカー」(テレビ朝日・1月期)=4・0%(7・1%)
【9】「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS・10月期)=4・0%(7・1%)
【9】「クジャクのダンス、誰が見た?」(TBS・1月期)=4・0%(7・0%)
8位の「特捜9 final season」の主人公は警視庁捜査一課9係の刑事・浅輪直樹(井ノ原快彦)。7年間にわたる放送が終わった。ずっと高視聴率だった。
同率9位の「じゃあ、あんたが作ってみろよ」は展開が速かったところが勝因の一つ。1話にして主人公の海老原勝男(竹内涼真)と山岸鮎美(夏帆)が別れた。動画を1・5倍速などで観る若い世代に合っていた。
構成も良かった。2人は別れたあと、再び付き合うチャンスに恵まれる。だが、性格や波長が合わないと2人は気づき、再び別れる。ずっと笑わせてくれた作品だが、最後は哀しかった。だからこそ現実味があり、余韻もあった。
同率9位の「クジャクのダンス、誰が見た?」の主人公は大学生・山下心麦(広瀬すず)。その父親で元刑事・山下春生(リリー・フランキー)が1話で殺される。春生は23年前に一家6人が殺された東賀山事件を調べ直していた。
心麦は自分も事件を追い始める。やがて春生とは実の親子でないことが分かるが、「私はやっぱり山下心麦なんです」と毅然と言い放つ。ミステリーかと思ったら、実際には「親子とは何か」と問い掛けてくる繊細な物語だった。
東賀山事件の犯人として誤認逮捕されたダメ親父の遠藤力郎(酒向芳)と父を信じる息子の友哉(成田凌)、春夫の事件を担当する検事・阿南由紀(瀧内公美)と自らが3人を殺す元検事の父・鳴川徹(間宮啓行)、春生殺しの犯人で心麦の実母・赤沢京子(西田尚美)。
それぞれに違った親子の形があった。逸作だった。
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