“2分差なら射程圏内”と語る「山の名探偵」に“インカレ2冠”の主将…早稲田大学は15年ぶりに「箱根」を制すか? 名門の戦力を徹底分析

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 2025年も残りわずかなったが、新年の訪れとともに「正月の風物詩」としてすっかりお馴染みになった箱根駅伝が幕を開ける。

 102回目の大会では、総合3連覇を目指す青山学院大学の戦いぶりに多くの視線が注がれるが、過去13度の優勝を誇る名門の早稲田大学も、15年ぶりの総合優勝を虎視眈々と狙っている。

「優勝を目指して1年間努力をしてきましたが、選手たちはハードな練習に取り組み、チーム内の競争を乗り越え、非常に良い形でここまで来られたと思っています」

 花田勝彦監督は12月の公開取材で確かな手応えを語ったが、その言葉通りに今季は主力が欠場する中で臨んだ出雲駅伝(10月)で2位、主力不在の戦いを強いられた全日本大学駅伝(11月)でも5位と健闘を見せた。前回大会を4位で終えた箱根駅伝でも、上位進出への期待は高い。【取材・文=白鳥純一】

箱根の山で“貯金”を作り総合優勝へ

 今季の早稲田大は全国高校駅伝(2025年12月)で日本人最高記録を打ち立てて、区間賞を獲得した鈴木琉胤(すずき・るい)や、日本選手権3000m障害3位の佐々木哲(ささき・てつ)、先の2駅伝大会でメンバーに起用された堀野正太(ほりの・しょうた)ら、実力を備えたルーキーが加わり、選手層に厚みを増した。

「私たちの場合は、何としても往路で優勝し、5区と6区の山区間でどのくらい“貯金”を作れるのかが、総合優勝を目指す上では本当に大切です。力のある選手を起用できると思うので、勢いに乗って大手町まで駆け抜けられたらと思っています」

 花田監督の思い描く必勝プラン実現の鍵を握るのが、今季は主将としてチームを率いた山口智規(やまぐち・とものり/4年)だ。

「優勝して花田監督と山口主将を胴上げしたい」

 部員たちがそう口を揃え、総合優勝を目指すチームの原動力になっている主将は、自身について「決して誰かに慕われるような性格ではないと自覚している」と謙遜しつつも、「『箱根で優勝したい』という気持ちが、みんなに届いてくれたことが大きかったと思う。『自分の言動に責任を持とう』と自分を含めた4年生が目標に向けて努力し、泥臭い練習に取り組めたおかげです」とチームの現状を明かし、積み重ねた練習に自信も覗かせる。

 前日に4位でレースを終えた今年の1月4日には、学生だけでミーティングを行い「優勝するチームはどんなチームであるべきか?」の思いを部員全員で語り合ったそう。1年間掲げ続けた目標達成に向けて期待も高まるところだが、そのためには前回大会でエース区間の2区を任されるも、区間12位に終わった山口の奮起も欠かせない。

エース区間で失速の主将は、雪辱誓う

 自身最後の出場となる今大会でも2区での起用が濃厚な山口は、「おそらく黒田朝日選手(青山学院大/4年)やリチャード・エティーリ選手(東京国際大学/3年)は、すごい走りをしてくると思うので、どんな展開になっても、彼らと競い合えるような走りができないといけない」と雪辱を誓う。

 今年は日本インカレ(6月・岡山)で 1500mと5000mの2冠を達成。ホクレン2025DC千歳大会(7月・北海道)では、5000mを13分16秒56で走破し、早稲田大学記録を18年ぶりに更新し、「攻めた走りで区間賞やトップ争いができれば……」と意気込む主将は、学生生活の有終の美を飾ることができるだろうか。

 そして、往路優勝に向けてラストスパートを懸ける山登りの5区には、前回大会で区間新記録の若林宏樹(当時、青山学院大4年)に次ぐ区間2位の激走を見せた工藤慎作(くどう・しんさく/3年)が控える。

「最低でも昨年と同じくらいの結果は求められていると思いますし、あと少しで手が届きそうな区間賞や区間新記録も、狙っていきたいと思っています。

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