俵孝太郎さん、橋幸夫さん、吉行和子さん、ジェームス三木さん…2025年に逝った「凝り性の著名人」たちの個性的すぎる“極め方”【追悼】
著名人が趣味を語る名物コラム
毎年この時期になると、その年に死去した人たちを偲ぶ特集記事などが目に入る。読むとまた切なさは増してしまうが、ここでは生前のはつらつとした姿に目を向けてみよう。ご紹介するのは「週刊新潮」で昭和から平成、令和にわたって掲載されたコラム記事である。
昭和の頃は「レジャー」、平成以降はコラムコーナーTEMPO内の「パスタイム」、同「マイオンリー」と、2020年5月まで続いた一人称の短いコラムは、いずれも“著名人が趣味や好きなものを熱く語る”という内容だった。挙げられたテーマは「釣り」「朝顔」「ペット」「書道」などさまざまだが、語る者の個性が色濃く表れた言葉の数々には、本業で受けたインタビューとはまた異なるおもしろさがある。
今回は2025年に他界した俵孝太郎さん(政治評論家)、橋幸夫さん(歌手)、吉行和子さん(女優)、ジェームス三木さん(脚本家)、増位山太志郎さん(元力士、歌手)の登場回をピックアップした。趣味の種類はもちろん、その極め方にも個性が感じられる。
(以下、引用部分は「週刊新潮」のコラム「レジャー」、「パスタイム」、「マイオンリー」より抜粋。一部仮名遣いなどを修正しています)
***
空き時間があればレコード店へ
政治評論家の俵孝太郎さん(2025年1月1日死去、享年94)がこよなく愛したのは、クラシック音楽のレコードだった。学生時代はオーケストラの定期演奏会に通っていたが、新聞記者になり状況が変わったことで、レコード派に転向したという。
〈新聞記者になり、大阪で働きだした。昭和28(1953)年、N響にジャン・マルティノンが客演し、ストラヴィンスキーの3大バレエ「ペトルーシュカ」「火の鳥」「春の祭典」を一挙に並べた曲目で来阪した。ところがその日、殺しがあって聴きに行けなくなった。前売り券を買って音楽会に通うのは無理な商売だとわかった〉(2012年10月4日号)
この時、マルティノンは初来日、俵さんは23歳。それから27年後の1980年9月、50歳の時には熱心なコレクター生活を楽しんでいた。
〈都心で仕事があって、その後テレビ局へ行くまで、ポッと2時間ぐらいの空きができてしまうことがある。そんな時は銀座の中古専門レコード店「ハンター」で時間をつぶす。杉並の自宅に帰れば、その往復だけで2時間はとられるし、だいいちそのタクシー代だけで中古のレコードが何枚も買える〉(1980年9月18日号)
[1/4ページ]



