俵孝太郎さん、橋幸夫さん、吉行和子さん、ジェームス三木さん…2025年に逝った「凝り性の著名人」たちの個性的すぎる“極め方”【追悼】

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買い集めるという楽しみ

 気に入らなかったものは処分しつつも、当時の所有数は約5000枚。80年代半ばにはなんと1万枚に達したが、すべて桐朋学園大学に寄贈した。

 コレクター魂が消えたわけではなく、CDに切り替えるためだ。家を建てたときに作った“3万枚収納の3列スライド式CD・DVD収納棚”もまた、どんどん埋まっていったという。

〈こうして棚も大方埋まってきたが、これからCDなどのパッケージメディアはどうなっていくのだろう。本は背表紙を見ていると中身がわかってくるものだ。レコードも同じで、ジャケットから演奏が伝わってくる。これがダウンロードに取って代わられるようになったら、買い集める楽しみもなくなるのだろうか〉(2012年10月4日号)

 パッケージメディアの将来を憂えていたのは2012年、81歳の時。そして13年後の2025年は、ダウンロードのさらに先を行く“配信”が主流となった。聴く楽しみ、集める楽しみを味わいつくして逝ったコレクター氏は、どのような思いを抱いていたのだろうか。

「上手い下手」を超越する

 定番とされる趣味にも、それぞれなりの極め方がある。たとえば橋幸夫さん(2025年9月4日死去、享年82)の書道。サインを我流で書くことが嫌で書家に数年教わったが、流儀や流派がなく、発想次第で自由に書き崩す“インテリアアートとしての書道”と出会った。

〈2010年10月には、新宿の高島屋でインテリアアート専門店が主催する個展を開きました。芸能生活50周年を記念して、50作品を出展したんですよ。“これだ”と思えるものが完成するまで何十枚も書くんですが、面白いことに1つ1つが少しずつ違うんです〉(2013年10月31日号)

 それからも、その年の干支を書いて自宅に飾ったり、CDジャケットのために曲名を書いたり。コラムに登場した2013年10月当時は、〈もっと掘り下げたい〉と語った。禅道場で出会った書道の先生に、“意識は必ず筆先にまで伝わる”と聞いたからだ。

〈座禅の前後では、同じ「一」という文字を書いても、変化が表れるというんです。(中略)書道を習い始めた時は「上手く書け」と言われたものですが、禅の先生は「上手い下手ではない」と言う。それで、書が自分の心境を写すものであるなら、「上手い下手」を超越すべきなのかなと思い始めています〉(同)

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