俵孝太郎さん、橋幸夫さん、吉行和子さん、ジェームス三木さん…2025年に逝った「凝り性の著名人」たちの個性的すぎる“極め方”【追悼】
推理小説を乱読していた力士
物語を読むことに心酔した元力士もいる。増位山大志郎の長男として生まれ、力士となった後は、演歌歌手としてヒットを飛ばした増位山太志郎さん(2025年6月15日死去、享年76)。コラムに登場した時のテーマは、高木彬光の『成吉思汗の秘密』ではまった「推理小説」だった。
〈このところ、まだ僕の読んでない推理小説はめっきり少なくなって、本屋によっちゃ捜し出すのに苦労するほどだ。読みだすと、途中でやめられなくて1日で読んでしまうものもあるし、平均すると、月に5、6冊ずつは読んでいる勘定だ。それが10年近く続いているから、これまで600冊から700冊の推理小説を読んできたことになる〉(1980年2月21日号)
この時、31歳。この後の3月場所は新大関として迎えたが、二桁の勝ち星は一場所のみで、1981年3月場所途中で現役引退を表明した。
〈いつでもどこでも気の向いたときに本を広げ、シオリをはさむかわりに、平気でページを折る。うっかり茶をこぼして、ハデなシミを作る。そんな汚い本は他人に差し上げるわけにはいかないので、読み終わるとどんどん捨ててしまう。それに、本の主人公になりきって、興奮しながら読んだものを、も一度読むつまらなさったらないからね〉(同)
推理小説以外にも鳩レースや絵画。趣味は余裕を作るのか、死去に際して弟子たちはみな、増位山さんの温厚さや器の大きさを振り返っていた。
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