「党の方針と矛盾し過ぎていてめまいが…」 維新議員が「国保逃れ」に使った脱法的スキーム 「100万円以上浮くケースも」
【全2回(前編/後編)の後編】
連立与党入りからまだ2カ月ほどだというのに、政治とカネの問題に事欠かない日本維新の会。新たに「保険料」をごまかしている議員がいたとの疑惑が持ち上がり、吉村洋文代表(50)が頭を悩ませている。「身を切る改革」にそぐわない、その卑劣な手口とは。
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【写真を見る】「国保逃れ」を行うセコ過ぎる維新県議たちの実名
前編では、維新議員の国保逃れ問題が表面化した経緯について報じた。
報酬より高額な月会費を納めるとは、一体どういうことか。社会保険労務士の北村庄吾氏が、改めてスキームを詳しく解説する。
「所得に応じた国保料を納めるのを避けるため、法人の理事や会社の役員になり、低額の報酬を受け取る。そちらをベースに算出される社会保険料を払ってコストを抑えるという手法は、昔から個人事業主向けに提案されてきた抜け道です」
兵庫県議員事務局によると、県議の報酬は額面で1540万円。国民健康保険料は最高限度額の年間109万円を納めることになる。加えて、国民年金保険料も年間で約21万円かかる。
「仮に理事の報酬を最低水準にしていたとすると、支払う社会保険料は厚生年金を併せても年間約15万円程度。正規の保険料と比べ、100万円以上が浮くことになります。社会保険料は会社や法人と折半して支払いますが、もし“月会費”の名目で理事が法人分の社会保険料を支払っていたとしても、限度額の国保料を払うよりは安い。違法ではないものの、制度の穴を突いた悪質な手段です」(同)
報酬より高い月会費が発生しようと、それが国保料より低く済めば、議員にはメリットがある。法人は月会費のうち、理事1人につき1万円でも回収できれば、月600万円以上が転がり込むことになる。双方に利があるスキームなのだ。
「党の方針と矛盾し過ぎていてめまいが……」
一方で、業務実態がなければ、違法性が問われるとも北村氏は指摘する。実際に京都にある法人の住所を訪ねてみると、そこはマンションの一室だった。ポストには法人の名前と共に、別の税理士法人の名前が書かれている。インターホンを押すと、この税理士法人の人物が対応し、
「その法人が何か、全然知らないんです。確かに法人の人が1人だけウチにいるんですけど、ネット関係に強いので、出向のような形で来てもらって仕事を手伝ってくれてるだけです」
と言い、問題視されていることなどには「知らない」と語るばかりだった。また、以前の所在地となっていた大阪にあるビル周囲の人々は、法人の名前を聞いたこともないとそろって首をかしげる。ビルの持ち主ですら、全く分からないと困惑するのだった。同法人は「活動実態はある」とHPで遺憾の意を表明しているのだが、実際にはとても600名超の理事がいる組織とは思えないのだ。
同法人で代表理事を務める人物について、維新関係者が明かす。
「代表理事のうちK氏とZ氏はそれぞれ、過去に維新の国会議員の秘書を務めていました。K氏は自身も、維新の公認で地方選に出馬した経験を持ちます。Z氏は経営知識が豊富で、自身でもファイナンシャルプランニングを手がける会社を持っている。K氏を含む複数の代表理事がこの会社に所属していたようで、Z氏は法人の中心人物ではないかとみられています」
その上理事にも維新の議員がいるのだから、国民民主党の足立康史議員の言うように組織的な脱法行為と見られても仕方があるまい。ある維新の地方議員は、こう憤る。
「わが身かわいさで正しい保険料負担を免れている議員がいると聞いた時は、党の方針と矛盾し過ぎていてめまいがしました。“また維新が不祥事か”と見られるのもいたたまれない。うわさでは関与した議員は党員資格停止処分もあり得ると聞いていますが、それぐらいは当然だと思います」
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