市ヶ谷・防衛省周辺の土地を静かに買いあさる中国の”魔の手” 「タワマンが”出先機関”と化す恐れも」

国際 中国

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 法の不備を尻目に、中国がじわじわと手を伸ばしつつあるのが、日本国内の「重要土地」周辺だという。気が付けば、かの国の「拠点」と化していた――そんな事態にもなりかねないのだ。

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「外国人政策」は、今夏の参院選における主要な争点の一つ。そこでは、外国人による土地購入のリスクについても議論が交わされていた。全国紙デスクが言う。

「2022年9月、国境離島や自衛隊基地、原発や在日米軍基地などの周囲およそ1キロの安全保障上重要な土地を対象に、土地利用規制法(重要土地等調査法)が施行されました。これにより、土地建物の利用状況を調査したり、利用を規制できるようになったのです」

 法施行を受けて内閣府は23年度、全国で指定された「特別注視区域」「注視区域」計399カ所を初めて調査。その結果、全国で計371件(土地174筆、建物197個)が外国人・外国法人により取得されていたことが判明したという。

「調査結果は昨年12月に公表されました。国・地域別では、中国が最多の203件、次いで韓国が49件、台湾46件となっています。都道府県別では東京都が最多の171件で、アパートやマンションなど、主に投資目的での取得とみられます」(同)

 その171件の内訳は、防衛省市ヶ谷庁舎周辺が104、北区の陸上自衛隊補給統制本部周辺が39、そして練馬駐屯地周辺が20などとなっており、

「とりわけ市ヶ谷庁舎周辺の104件のうち、中国人や中国法人による取得は65件に上っています」(同)

 実際に、市ヶ谷庁舎や、その隣の警視庁第四方面本部にほど近いタワーマンションの登記簿を調べると、キャッシュ購入から1億5000万円ほどの住宅ローンまで、高層階に複数の中国人らしき所有者が確認されたのだった。

本国に要請されたら……

 先のデスクが言う。

「今回は、全国の371件いずれも、重要施設への妨害電波など『阻害行為』は認められず、土地建物の利用中止勧告や命令が出されたケースはありませんでした。ですが、この土地利用規制法はそもそも、土地買収に対する安全保障上の観点から整備されたもの。その一方で、外国資本による売買自体は禁じられておらず、“有名無実ではないか”といった懸念の声が上がっていました」

 件のタワマンからは、市ヶ谷庁舎がはっきり見下ろせる。実際に、さる防衛省関係者は、

「省内では“すでに四方から見下ろされ、活動は監視されていると思った方がいい”というのが共通認識になっています」

 そう明かすのだ。中国事情に通じるジャーナリストで、キヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏が言う。

「中国では17年6月に国家情報法が施行され、すべての組織・個人が国家情報活動に協力する義務を負うことになりました。つまり、タワマンに住む中国人も当然、協力を要請されたら応じざるを得ないのです」

 防衛省の敷地内をのぞくだけでは済まなくなるかもしれないのだ。

「タワマンが“出先機関”と化す恐れも」

 中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏が言う。

「タワマンを取得した中国人が純粋なビジネスマンであっても、富裕層であれば在日大使館などと関係が深まっていき、いつの間にか本国政府の片棒を担いでいても不思議ではありません。3年前、中国が無断で世界中に自国警察の『海外派出所』を置いていたことが発覚し、日本でも秋葉原の拠点が取り沙汰されました。今回のタワマンも先々、こうした“出先機関”と化す恐れは十分にあります」

 魔の手は、静かに忍び寄ってくるのだ。

週刊新潮 2025年12月25日号掲載

特集「日本人は辟易…ヤクザな中国を暴く」より

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