「33億件のユーザーID」を不正取得して逮捕された中学生も…デジタル教育の強化で“サイバー犯罪の低年齢化”を進めないために何が必要か

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犯罪の動機は「青臭い正義感」

 2022年には米Uberへの大規模なハッキングで18歳の少年が、24年にはロンドン中を大混乱に陥れた交通局への大がかりなサイバー攻撃で18歳と19歳の少年が、それぞれ逮捕されている。

 Uberにハッキングをした少年は、その動機を「ドライバーの給料を上げたかった」と供述したという。一方で、ネットカフェを運営する企業へ侵入した日本の高校生は、「サイトの脆弱性を見つけたかった」と、腕試しを動機として話している。

 公私にわたる熱心なデジタル教育を受け、興味をもって独自に情報を検索して深掘りし、技術と知識を身に付けた若く才気走った若者が思いつくことは、とどのつまり青臭い正義感の行使であり、承認欲求に基づいた腕試しなのだ。これに悪知恵が加われば、技術と余暇を活かした小遣い稼ぎ、あるいは情弱を狩って金品をせしめるゲーム感覚の悪ふざけとなる。

 いずれにせよ、時代背景や舞台は異なれど、何かに熱中する若者が考えることはいつも同じともいえる。技術力や知識量が上がれば良いというものでもなく、一般的な常識や倫理観、まさにリテラシーがついてこそ、良き市民たりえるのもまた同じことだ。

小学生の娘はネトゲで「カレシができた」

 ところで、楽天モバイルへの不正アクセスを行っていた中高生は、オンラインゲームのチャット機能を通じて知り合っていた。居住地や学校の垣根を飛び越えてSNSで繋がり、サイバー犯罪に及ぶ。しかも、世界中に同じような志向を持つ子どもがいる。AIがビジネスにも生活にも浸透するなかで、言葉の壁もなくなりつつある。

「カレシができた」、小学生の娘が言う。よくよく聞いてみると、オンラインゲーム上でのことだった。「言葉遣いがちょっと変」と聞いて、一緒にログインすると「カレシ」がすぐにチャットで話しかけてきた。娘は無邪気に会話を続けている。

 日本語に違和感がある。まるで、翻訳機を通したような言葉遣いだ。もしや外国人かと思い当たり、血の気が引くと同時に冷たいものが背筋を走った──実際に聞いた話である。

 親の懸念材料は日増しに募るばかりだ。個性を尊重し、褒めて伸ばす一辺倒で、社会の常識や倫理は後回しとなれば、子どもが痛い目に遭わないと本当の意味でのリテラシーが身に付かない可能性もある。文字どおりの致命傷となりかねない、本当に痛みを伴う事態となるまで放っておいて良いものかどうか。

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