今や小学3年生でも「自撮り」「鍵垢」「バズる」「なりすまし」といった言葉は常識…低学年の子どもにとって「スマホが憧れの対象」で本当に大丈夫か
小学校4年生の女児が、友達とリビングで工作をしていた。学校の授業で使ったらしい厚紙と色紙の残りを切ったり貼ったりしている。普段は二人とも活発なほうなのだが、時折りボソボソと話し声が聞こえるほかは、紙がたてるカサカサとした音だけだ。友達が帰った後、女児は母親であるAさんに工作を見せに来た。「スマートフォン、つくったの!」【井上トシユキ/ITジャーナリスト】(全3回の第1回)
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厚紙を二つ折りにして手のひらサイズにし、片側をテープで留めてスマートフォンの筐体のようにしてあった。表の面には四角い窓が切ってあり、中には別の厚紙を芯のようにして色紙が巻いてある。指でシュッと「スワイプ」すると巻いた色紙が回転し、時刻表示からファイル表示に切り替わった。
時刻は女児と友達二人の誕生日を足した数らしい。ファイルには、ゲーム、日記、ひみつノートなとど不規則によれた字が色鉛筆で書いてある。
背面は、色紙を切った破片で花のような模様があしらわれ、キラキラと光る工作用のスパンコールが糊付けされている。若い女性の間で流行っているデコレーションのつもりだろう。
「そうか、もうスマートフォンを持ちたがる年齢になったのか」
自分が小学生の頃、まだスマートフォンなど世の中に存在しなかったこともあり、Aさんは戸惑いを感じるばかりだった。
小学生が欲しいものといえば、一般的にはゲーム機や文房具、キャラクター物の人気が根強いとされ、各種の調査でもそのような報告が多い。しかし、東京23区内の北部に住むAさんによれば、小学生の欲しいもので隠れ人気ナンバーワンはスマートフォンではないか、という。
スマホは「カッコいい」
「うちの娘が通う公立小では2年生からタブレットPCが貸与され、授業のなかで簡単な動画作成といったプログラミングの基礎を教えてもらいます。学校のほうでフィルタリングをしているので自由に検索できるわけではないのですが、それでもアニメや鉄道関連など小学生が普通に興味を持つことは調べられるし、制限はあるものの動画も見ることができます」
ITやネットは、むしろ小学生の身近にある。だからこそ、支給されたタブレットPCよりもいろいろなことが自由にできて、毎日に愉快で楽しい彩りを添えているように映るスマートフォンには興味津々なのだろう。
活発な子どもにも大人しい子どもにも、共通して人気なのは動画サイトやSNSのショート動画だ。スポーツやゲーム実況、アニメの名シーンなどの切り抜き、それにダンスシーンの動画も人気がある。芸能人やYouTuberが投稿する仲間、仲良しグループで撮る自撮りに憧れのような気持ちを抱く子どもも多い。
実際に話を聞いたなかに、昨春6年生の卒業式に合わせて、学年を跨いだ仲良しグループでふざけながら撮った動画を「宝物」と表現した3年生の女児がいた。
撮ったのは卒業する6年生で、使用したスマートフォンは親からの借り物だったが、テキパキとよどみなく操作する姿を見て「カッコいい」と思ったという。
「だって、パパやママより速いんだよ!」
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