「投手としてのピークは2年以上先」 山本由伸の“肉体の秘密”を専属トレーナーが明かす
“フルモデルチェンジ”
山本は都城高校(宮崎県)の2年生の時、すでに151キロを投げ、「剛腕」として知られたが、
「実際に彼の投球フォームを見てみると、自然の原理に反するもので、肘を壊しかねない投げ方でした。それを指摘すると“実は投げ終えたら、肘がパンパンに張るんです”との答えが返ってきた。そこで私は“150キロ台のフォークボールを投げたかったら、根本的に投げ方を変えなければいけない。フルモデルチェンジが必要ですよ”と伝えたのです。車に例えるなら、これまで乗っていたスポーツカーを捨て、レーシングカーに乗り換えるよう提案したわけです」
肘や関節といった部分的な修正を試みるのでなく、矢田氏が説いたのは、体全体の動きを丸ごと変える必要性だった。
「私の治療法は、あえて言葉にするなら“偏りを取り除く”という一点に尽きます。人間の身体構造はシンメトリーです。筋肉の量も骨の数も左右等しい。つまり左半身と右半身が同じように機能すれば、痛みやケガは伴わないはず。私に野球経験はありませんが、1980年の開業以来、身体機能向上を目指した治療に取り組んできました。ただ私の施術は体に触れはしますが、もんだり、押したりはしない。そのため患者は何をされているか分からず、山本君も施術中は毎回のように爆睡しています」
矢田氏と会った17年4月を境に、山本のトレーニング内容も様変わりする。ジャベリックスロー(やり投げ)を練習に取り入れ、“全身を使って投げる”感覚と体の使い方を血肉化。その年の冬には、毎日のように矢田氏の元に通った。
正しく立つには、正しい呼吸が必要
ウエイトトレーニングを一切しないことで知られる山本だが、それでも成長を続けるのは、矢田氏の指導の下、独自のエクササイズに取り組んできたためだ。
「普段、彼がやっているのはブリッジや倒立(逆立ち)、フレーチャ(投球フォーム改善器具)を使ったトレーニングです。体の柔軟性や体幹を鍛えることなどを目的としたものとなります」
ブリッジは腹圧を強め、下半身で生み出された力を上半身へとスムーズに伝え、倒立は肩や肩甲骨などの可動域を広め、体幹を安定化させるのに役立つという。
「これらエクササイズの中には呼吸法も含まれます。そもそも正しく立てない者に、正しく歩くことも、走ることも、ましてや投げることもできません。そして正しく立つには、正しい呼吸が必要になります。呼吸こそ、すべての動作の第一歩に当たるのです」
山本が矢田氏の接骨院に通うようになって、最初に直面した課題は「正しく立つこと」だった。
「大抵の人は、立つ際に太ももやお尻、腰に力が入っています。重心が足の指先や踵などに偏ってかかっているためです。どこにも力が入らず、バランス良く立つというのは思いのほか難しい反面、全ての身体動作の基本となります」
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