「親には相談しない方がいい」 AIの助言が「最悪の結末」に…SNSが招く「自己肯定感」の低下

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リアルな居場所

 さらに深刻なのが、レコメンド機能です。もし精神的に不安定な状態にある子どもが、SNSで「自殺」や「過度なダイエット」といったネガティブなキーワードを一度でも検索したり、関連動画を視聴したりすると、アルゴリズムがそれを「本人の関心事」だと判断します。その結果、本人の意思とは無関係に、同様の有害な情報や医学的に誤った情報が次々と表示され、視野が狭まり、危険な思考から抜け出せなくなってしまう、ということが起こりうるのです。

 こうしたデジタル世界の新たな脅威から、子どもを守るために最も重要なことは何でしょうか。それは、子どもの「リアルな世界の居場所」を確保し、守ってあげることです。

 ネット依存の問題や様々なトラブルの多くに共通しているのは、現実世界に安心して相談できる人や、心から信頼できる仲間がいないという「孤立」です。学校の成績が振るわない、部活動で挫折した、家庭内に安らぎがないなど、現実世界での居場所を失った子どもたちは、その心の隙間を埋めるように、インターネットの世界に救いを求めてしまいます。

 スマホが唯一の「居場所」になってしまうと、その世界に深く引きずり込まれ、現実の生活に戻ることが困難になる場合があります。心の寂しさを抱えた子どもがネットの世界に深く依存することは、オンラインでのいじめ、犯罪被害、個人情報の漏洩といった、さらなるトラブルに見舞われる可能性も高まります。

 学業、部活動、習い事、家庭生活。子どもが心から安心できるリアルな居場所を複数確保した上で、スマートフォンが「便利なツール」として正しく使えているか、常に気を配る必要があります。

 最後に、ご自身の姿を振り返ってみてください。子どもとの対話中や食事中に、無意識にスマホを手に取っていませんか。その姿を、子どもたちは鋭く見ています。

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 第3回【まるで「ハッカー」…スマホ制限の突破で子どもが積む「悪い成功体験」 モラル崩壊の危険も】では、知らないうちにスマホの制限を解除する子どもにどう向き合えばいいか、語っている。

高橋暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授、ITジャーナリスト。SNSや情報リテラシー、スマートフォンやインターネットに関連する事件・トラブルとその対策を専門とする。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代+」などメディア出演多数。元小学校教員であり、高校生の母でもある。近著に『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)などがある。

デイリー新潮編集部

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