「地震は海底核実験によって引き起こされた」 フェイクニュースを放置する中国政府 「共産党が関わっている可能性も」

国際 中国

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 他国の弱みに付け込んで、これでもかと畳みかけてくるのが中国の常套手段である。今回も、天変地異に乗じる形で飛び交った偽情報を放置し、結果的に「ネガティブ戦略」を助長したというのだから開いた口がふさがらない。

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 青森県東方沖を震源とする最大震度6強の地震が起きたのは、さる8日の深夜。その日の午前、北海道で大量のイワシが浜辺に打ち上げられた映像がXに投稿されると、ネット上で話題となった。

「投稿者は“イルカから逃げられなくなったらしい”としていたのですが、その夜に地震が起きたことから、“地震の前兆だったのでは”といった反応が寄せられるに至ったのです」(さる中国ウォッチャー)

 もっとも、イワシが海岸に打ち上げられる現象はこれまで各地で起きており、地震との関連は解明されていない。ところが、

「中国では、青森の地震とイワシとを関連づけて“地震で汚染水が広がってイワシが大量に死んだに違いない”などといった偽情報がSNSで拡散されていったのです」(同)

“地震は海底核実験によって引き起こされた”

 念のため「汚染水」とは、福島第一原発事故における「処理水」の中国側での“呼称”である。

「元々は、中国共産党北京市委員会のタブロイド紙『新京報』などが、SNS『微博』を通してイワシの大量死をそのまま報じたニュースを配信しました。ですが、その過程で“日本が海底核実験をしたのだろうか”“核汚染魚だ”といった反応が、微博ユーザーによって広まってしまいました」(前出の中国ウォッチャー)

 また「新京報」が配信した動画ニュースにも、

「“この地震も3.11も、日本の海底核実験による核物質の漏えいと爆発によって引き起こされたものだ”といったコメントが寄せられていました。そもそも、青森の地震に対しても中国では“日本国民は苦しみ、彼らの邪悪な政府も損害を被っている”“秘密裏に核実験を行って地球に穴でも開けたのでは”といった荒唐無稽の言説が流布されているのです」(同)

「弁公室」が指示

 中国事情に通じるジャーナリストで、キヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏が言う。

「一連の日本への対応は、習主席が直接細かい指示を出しているわけではないでしょう。それでも、彼の事務室である『弁公室』から内々に指示は出ています。11月13日には“日本には強硬姿勢でいけ”“さらに対日制裁の準備を進めよ”という命令が各部門に伝達されているのです」

 そう前置きしながら、

「イワシのニュースが拡散される過程で、こうした偽情報が付随するのには、この内部指示の影響が当然あると思います。フェイクニュースを流す目的は認知戦ですから、党の中央宣伝部などが関わっている可能性もあります」

 さらに続けて、

「日本に来るような富裕層は“核汚染魚”などがでたらめだと分かってはいますが、多くの中国人にはその判断がつきません。ネットの言説をそのまま信じている人が多いことと思います」

 中国に詳しいノンフィクション作家の安田峰俊氏も、

「中国では政府批判や国内分裂をあおるような内容のSNS投稿は厳しく規制されますが、日本に関するフェイクニュースは放置される傾向にあります。そのため民間の“反日コンテンツ”は人々の怒りに火をつけ、アクセス数を伸ばしていくことができるのです」

 でたらめでも見て見ぬふり。こうして官民一体となったキャンペーンが展開されるわけだ。

週刊新潮 2025年12月25日号掲載

特集「日本人は辟易…ヤクザな中国を暴く」より

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