「男はつらいよ」最終作のロケ現場で「スーパーマンは空を飛べないんだよね」…渥美清が前田吟に漏らした“切なすぎる言葉”の意味とは

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「スーパーマンは空を飛べない」

 それでも「1億円に10万円足りないくらい」まで稼いだ年もあったとか。渥美や倍賞ほどではないが、CMにも出演した。もっとも、泉ピン子には「あんたは味噌とか麺つゆとか生活感のあるCMが多いね」と言われたそうだが。

 連載の後半は、やはり渥美の体調に関する話が多くなった。渥美が肝臓がんを告知されたのは、吉田日出子がマドンナの44作「寅次郎の告白」のころだった。もっとも、そのことは山田監督はもとより、関係者の誰にも知らされなかった。しかし、明らかに具合が悪く、撮影所でも横になっていることが多くなっていた。

 浅草「フランス座」時代からのポン友で、後半はずっと出演していた的屋仲間のポンシュウこと関敬六は、渥美が大量の薬を飲む姿を見て「あまり飲まない方がいいよ」と注意したこともあったという。

 前田さんも薄々それらのことはわかっていた。そして渥美清最後の出演作であり、浅丘ルリ子がマドンナを務めた48作「寅次郎紅の花」で、こう言われたという。

「スーパーマンは空を飛べないんだよね」

兄さんは博士か大臣

 少し説明が必要だろう。渥美は48作の公開前にNHKの「クローズアップ現代」に出演しているが、その取材班が番組などについてまとめた『渥美清の伝言』(KTC中央出版)から引用する。

〈「寅さんが手を振り過ぎたのかな? 愛想が良すぎたのかな。スーパンマンの撮影の時に、見ていた子どもたちが「飛べ、飛べ、早く飛べ!」って言ったってことだけど、スーパ―マンは、やっぱり二本の足で地面に立ってちゃいけないんだよね。だから、寅さんも黙ってちゃいけないんでしょう。二十四時間、手を振っていなきゃ、ね。ご苦労さんなこったね。「飛べ、飛べ」って言われても、スーパーマン、飛べないもんね。針金で吊ってんだもんね」〉

 実はこの頃、地方ロケの際、渥美は見学に来た寅さんファンに手を振る体力、気力すらなくなっていたのだが、体調の悪化を知らない一部のファンから批判的な声が上がっていたのを、渥美自身が気にして漏らした言葉だった。

 最後に、劇中のセリフも取り上げたい。寅さんの名セリフをフィーチャーした本が何冊も出版されているが、前田さん演じる、博さんの突っ込みも絶妙で面白いし、笑える。

 数ある名突っ込みの中から、風吹ジュンがマドンナの45作「寅次郎の青春」から。

〈失恋して成長するなら兄さんなんか今ごろ、博士か大臣になってるはずじゃないですか〉

 寅さんシリーズを象徴するようなセリフだと思う。

【第1回は「親戚中をたらい回しにされた『前田吟』壮絶な少年時代…どんな言葉よりも雄弁だった渥美清さんの“背中に刻まれた傷”」想像を絶する前田さんの幼少期とは】

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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