「男はつらいよ」最終作のロケ現場で「スーパーマンは空を飛べないんだよね」…渥美清が前田吟に漏らした“切なすぎる言葉”の意味とは

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 夕刊紙・日刊ゲンダイで数多くのインタビュー記事を執筆・担当し、現在も同紙で記事を手がけているコラムニストの峯田淳さんが俳優、歌手、タレント、芸人ら、第一線で活躍する有名人たちの“心の支え”になっている言葉、運命を変えた人との出会いを振り返る「人生を変えた『あの人』のひと言」。第47回は俳優の前田吟さん(81)の後編。まだまだ秘話が満載です。(全2回の第2回)

4人の子どもに恵まれ……

 前田吟さん(81)の壮絶な生い立ちは前回書いたが、その後の私生活も波乱万丈そのものだった。連載〈前田吟「男はつらいよ」を語る〉の前半は、そこに多くを割いた。

 前田さんは上京してから1年弱、東京芸術座に1期生として籍を置き、アルバイトに明け暮れた。やがて、渋谷の喫茶店でバーテンダーをやっている時に知り合った女性と付き合い始める。そして役者としての運命の分かれ道となる俳優座養成所を受けて合格したが、その2年目に長男が生まれ、養成所を出た後、2つ違いの次男が生まれた……ここまでは普通の家族関係だった。

 しかし、夫婦仲がギクシャクし、24歳で離婚することに。当時の慰謝料としては破格の1500万円を払ったという。長男と次男は前田さんが引き取ることになったが、親権をもらうのにさらに800万円を払っている。その頃は養成所を出て俳優として仕事も増え始めた時期だった。仕事をやりながらなので、困ったのは子育て。そんな時に新宿のスナックで出会ったのがシングルマザーの女性だった。

 27歳の時に再婚すると長男、次男に、その女性の連れ子の男子を合わせて子供が3人になった。もっとも、その子の年齢は長男、次男の間で、次男は三男になり、学年が年子の男の子3人になった。その後、再婚相手との間にもう一人、男の子ができて結局、4人兄弟に。4人は母親が異なる子供が2人ずつ、前田さんと血がつながらない子供が1人ということになる。

 両親が離婚しただけでも世間では揉めるのに、この複雑な家族構成は傍から見れば想像を絶する。もっとも、前田さんはそんなことは気にせずに子育てし、一番の願いは4人の子供をきちんと大学まで出してあげることだった。前田さんは高校を1年の1学期程度で中退しているから、子供に学歴で苦労させたくないという親心だったのだと思う。

 そうなると、先立つものはお金である。幸い「男はつらいよ」という代表作・看板映画にレギュラー出演し、他の仕事も途切れることなく続いた。しかし、男の子4人を大学まで出すのはそれなりにお金がかかる。そこである時、渥美清とその話になった。

 前田さんは生涯で、一度でいいから1年で1億円稼ぎたいと思っていた。300日働くとして1日33万円……そんな風に考えたりして、渥美に「1度でいいから1億円稼ぎたいけど、それにはどうしたらいいですか」と尋ねたという。

 それを聞きながら渥美は最初、「どうしてそんなにお金がほしいの?」と笑って聞いていたが、そのうちに怒り出した。

「バカだね。役者はそういうことを考えちゃいけないんだよ。これからどんどんいい仕事が入って来るんだから、もっと仕事に没頭しないと」

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