「日本が加害者」 レーダー照射で中国が暴論を吐く理由 「アメリカの出方を探っている」「威圧を継続する可能性も」
今月6日の中国軍による「レーダー照射」問題が尾を引いている。自衛隊パイロットの命を脅かすような出来事だったにもかかわらず、中国側の反論はとんちんかんなものばかり。「俺がルールだ」と言わんばかりの態度である。
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まるで鬼の首を取ったと言わんばかりである。先のレーダー照射に関する音声を中国側が公表したのは、12月9日のこと。中国側が訓練を行うとの連絡を海上自衛隊の護衛艦に送り、それを受け取ったとの返答を得たという内容だ。やりとりがあったのは、6日14時過ぎ。その2時間後、太平洋上に進出していた中国軍の空母「遼寧」から発艦した戦闘機が、警戒に当たっていた自衛隊機に対し、執拗(しつよう)にレーダーを照射したのだ。ミサイルの発射準備とも取れる危険行為なだけに、小泉進次郎防衛相(44)が7日未明に即座に会見を開き抗議の意を表明していた。
中国外務省の郭嘉昆(かくかこん)・報道官は前出の音声をもって事前通告がなされていたとし「日本側がデマを流して騒ぎ立てた。茶番劇の仕掛け人であり加害者だ」と得意げなのだが、元空将で麗澤大学特別教授の織田邦男氏は「反論として成立していない」と切り捨てる。
「不審機に対して自衛隊がスクランブル(緊急発進)を行う『防空識別圏』内での軍事訓練では、事前にノータム(航空安全に関わる情報を関係者へ通知する国際システム)で訓練区域を緯度・経度などで詳細に伝えることが欠かせません。公開された音声は単なる“訓練を開始する”という通知に過ぎず、全く事前通告になっていない。そもそも問題の本質は、レーダーの照射時間が長過ぎることです。自衛隊機の後ろを追尾しながら、ミサイルの“ロックオン”にも取れるようなレーダーの使い方をしたことは、明らかにマナー違反。嫌がらせです」
「国際的に見てもありえない」
小泉大臣は10日、「危機回避のために十分な情報がなかった」と反駁(はんばく)した。しかし15日には中国側も「訓練を行う海域も事前に通達していた」と再度日本を批判、双方の主張はすれ違ったままだ。横車を押す中国側の対応について、元海将で金沢工業大学大学院の伊藤俊幸教授はこう憤る。
「日中も含む21カ国で同意された海上衝突回避規範(CUES)という取り決めがあります。洋上での事故を防ぐためのもので、今回使われたとみられる火器管制用レーダーを向けることも、避けるべきだとされています。国際的に見てもあり得ない行為なのです。大体、防空識別圏で堂々と訓練すること自体おかしい。自衛隊は国民の命を守るため、当たり前の警戒を行ったまでです」
威圧を継続する可能性
こうした蛮行の背景を、防衛研究所の地域研究部主任研究官・杉浦康之氏はこう分析する。
「先の高市首相の“存立危機事態”発言が一つのファクターです。台湾有事の際に日本が米軍を支援するというのは従来の見解と何ら違わないのですが、習近平国家主席(72)にはこれが出過ぎた発言に聞こえたようです。各機関に何かしら対抗手段を行えという命令が下る中で、軍なりに忠誠を示したのが今回の行動だったと推察されます。実際、外交部と軍が歩調を合わせて反論してきていることや、党機関紙『人民日報』系列の国際情報紙に即座に批判記事が載っていることなどが、予定された行動だったことを示唆しています」
また、中国側にはアメリカの出方を探る目的もあったとみる。米国のドナルド・トランプ大統領(79)は、今回の件について態度を明らかにしていない。
「米国務省は中国を批判するコメントを出していますが、トランプ氏がどう考えているかは読めません。中国側はこれぐらいなら虎の尾を踏まないとみて、こうした威圧を継続する可能性があります」(同)
相手のバックをうかがいつつ無理を通す。そんなヤクザなやり方が国際社会でどう評されるかなど、かの国はお構いなしということだろう。


