何者にもなれない焦燥感…オードリー若林が「初の小説」 タイトル『青天』に込められた意味

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新しい表現への挑戦

 お笑いコンビ・オードリーの若林正恭が初の小説『青天』を刊行することが発表され、話題になっている。これまでエッセイでたしかな筆力を示してきた若林が、ついに小説という新たなフィールドに挑むことになった。この発表は単なる芸能ニュースではなく、1人の書き手が新しい表現領域に踏み出す挑戦として受け止められている。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 若林の文筆家としての実力はすでに多くの人に認められている。「人見知り芸人」として知られていた彼が、「M-1」準優勝をきっかけにテレビに出るようになって、自分が感じた違和感を素直に記した『社会人大学人見知り学部 卒業見込』と、そこからの成長を描いた『ナナメの夕暮れ』は多くの読者の共感を呼び、ベストセラーになった。

 キューバ旅行の体験をまとめた紀行エッセイの『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』は、ピュアな視点と思考が評価され、斎藤茂太賞を受賞した。彼の文章には、自分自身を冷静に見つめる観察眼と、それを言語化する繊細な表現力がある。人見知りで内省的な性格が深い洞察を生み出している。

 若林の書く文章が持つ魅力は、その徹底した自己分析にある。彼は自分の感情や思考を、まるで顕微鏡で覗き込むように細かく観察し、それを読者が理解できる言葉に翻訳していく。そこには芸人として磨いてきた「観客に伝わる言葉を選ぶ力」が生かされている。自分自身のことを突き放して見る能力が、文章を書く上でも強力な武器となっている。

 今回の小説『青天』は、四半世紀前の東京を舞台にした高校アメフト部に所属する青年たちの物語だという。タイトルの「青天(あおてん)」は、アメリカンフットボール用語でタックルを受けて仰向けに倒れることを意味する。空を見上げながら倒れる瞬間の痛みと充実感、挫折と達成感といった複雑な感情を「青天」という一語に込めているのかもしれない。

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