「自由席の削減」が進む鉄道業界…それでも一部の利用者が「自由席」にこだわる意外な理由 「割安な料金よりも、むしろ座席ガチャの問題です」

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 昨今、鉄道会社各社で、縮小・廃止の動きが急速に進んでいるのが「自由席」である。JR東日本では主な新幹線や首都圏近郊の特急列車の全席指定席化が進み、JR東海が運行する東海道新幹線「のぞみ」はそれまで1~3号車の3両が自由席だったが、今年3月のダイヤ改正で1~2号車の2両に短縮された。

 さらに、JR北海道では2026年3月のダイヤ改正で、道内を走るすべての特急が指定席化される予定だ。確実に着席できるという指定席のメリットを歓迎する声が多い一方で、こうした動きに反対の声も上がっている。中には、指定席を取る金銭的、時間的余裕もあるのに、あえて自由席しか選ばないという自由席派もいるという。その背景には、プライバシー意識の高まりから主張されるようになった“座席ガチャ”の問題があるようだ。【文・取材=宮原多可志】

指定席の座席ガチャではずれを引くと

 夜行バスでは“相席ブロック”が大きな問題になっている。一般的な夜行バスは2列×2列の4列シートを採用していることが多く、長時間の移動で隣席に人がいると窮屈に感じることが多いし、他人がそばにいると眠れないという人もいる。女性だと「夜に男性が隣に座っていると不安」という心理が働きやすかったりする。

 隣の座席に、苦手なタイプの人、清潔感に欠ける人が来てしまうことを「座席ガチャではずれをひいた」などと表現する。SNSを見ていると、太った人、タバコ臭が漂う人なども嫌厭されやすい傾向があるようだ。

 そこで、あらかじめ2席分を予約しておき、出発ギリギリにキャンセルする行為を相席ブロックという。出発直前にキャンセルすれば隣の席が埋まりにくく、手数料はかかるものの、2席分を1人で使えるぶん快適に移動できるというわけだ。しかし、バス会社は1席分を販売できずに損をしてしまうため、以前から問題視されてきた。

 そうしたプライベート感を求める風潮は鉄道の自由席のニーズにも表れている。それまでの自由席は、どちらかといえば指定席よりも安いことや、具体的なスケジュールが決まっていないなどの理由で選ばれることが多かった。今は、座席ガチャではずれをひきたくないという理由で、自由席を選ぶ人が一定数いるのだという。

隣に苦手な雰囲気の人が来てほしくない

 窓口で切符を販売しているJRグループの鉄道会社の現役社員が、座席ガチャを理由とした自由席のニーズをこう解説する。

「自由席の需要は、特に若い世代から高い印象を受けます。その理由の一つが、座席ガチャの問題。指定席だと、席に着くまで隣にどんな人が来るのかわかりません。自由席は自分が座っているときも、また、途中駅で自分が座るときも、隣に来る人をある程度選ぶことができるメリットがあるのです」

 では、乗客はどのように対策をしているのだろうか。前出の社員はこう続ける。

「新幹線で良く見られる光景ですが、隣の席にキャリーケースなどの大きな荷物やカバンを置いている人がいます。夜行バスとはちょっと意味合いが違うかもしれませんが、事実上の座席ブロックですね。カバンが置いてあると、後の駅から乗ってきた人は『座ってもいいですか』と声をかける必要がある。心理的に隣に座りにくい雰囲気が生まれるぶん、降車駅まで隣がいない状態で移動できる可能性が高まります。

 また、途中から自分が乗るときも、苦手な雰囲気の人を避けて着席することができます。特に、男女を問わず異性の隣に座りたくないという人はいますし、怖そうな雰囲気の人を避ける傾向があるのは事実。指定席で割高な料金を払って嫌な思いをするなら、最初から自由席にするというニーズが生まれるのは当然かもしれません」

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