韓国が「核武装」する日 超親米派も「トランプは信用できない。自主国防を」と言い出して…鈴置高史氏が読む
米専門家も「韓国は核武装に走る」
――米国から離れたら、中国との関係はどうする?
鈴置:千英宇理事長は「親しくなろうと努める必要はあまりない」と言い切っています。これも核武装が前提です。米国の核の傘が怪しくなっても、自前の核さえ持てば中国を恐れる必要はないのです。
米国の最新の「国家安全保障戦略(2025年版)」で、韓国は第1列島線の外に置かれる一方、その防衛にはさらに貢献するよう求められました。しかし、核を持って事実上、中立化すれば米国のコマとして中国と敵対させられることも無くなります。
「 国家安全保障戦略(2025年版)」が韓国にとって「やらずぶったくり」なものであることから、米国の専門家の中にも「韓国は核武装に走るだろう」と予測する人が出てきました。
中央日報のインタビューに答えたスタンフォード大学のD・スナイダー(Daniel Sneider)氏は「米国が北朝鮮防衛に関心がないならば、韓国がなぜ台湾で起きることに気を遣わなければならないのか」と米国の身勝手さを指摘したうえ「韓国人は核兵器で自らを守らなくてはならないという考えをさらに強く持つようになる」と言い切りました。
「『韓国、独自の核保有渇望するだろう…トランプ政権の安全保障戦略核心を見よ』(1)」(12月14日、日本語版)をご覧ください。
「米中二股論」のデジャブ
――米国離れを意味する自強論。保守の間に広まるでしょうか?
鈴置:広まる可能性が高いと思います。第2期トランプ政権以降、韓国人は米国に対する不信感を一気に高めました。トランプ関税、「国家安全保障戦略(2025年版)」、ウクライナに対する領土の放棄要求……。
「我が国も米国頼みでは危ない」という気分が高まっていますから、千英宇理事長の「自強論」に賛同する保守人士も多いでしょう。保守はもともと核武装論が主流です。米国が許さないから断念してきただけです。
一方、「自強」に伴う米韓同盟の希薄化は不安材料ですが、今すぐに打ち切るわけでもない。自前の核を持つことで埋め合わせていけばいいわけです。千英宇理事長の主張が「自強論」の広がりの引き金になる可能性が大いにあります。
「米中二股論」もそうでした。21世紀に入り、中国の経済的台頭が明らかになるとともに韓国人は中国接近を考え始めました。ただ、保守はそれまで米国一辺倒であり、その威光を背景に力を振ってきたので、急には変われない。
そこに2013年4月1日、保守言論の大御所である朝鮮日報のコラムニスト、金大中(キム・デジュン)氏が「“二股外交”」(韓国語版)を書いて流れを変えたのです。
「今、韓国の運命を変えるのは米国ではなく中国だ」と言い切ったうえ、就任したばかりの朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し、米国よりも先に中国を訪問するよう強く勧めました。
極め付きの親米派の中国傾斜宣言でしたから以降、保守は安心して中国シフトを叫べるようになりました。韓国紙は次第に「米中の間に立って2大国を操る天才的な朴槿恵外交」を褒めそやすに至りました。実態は「離米従中」であり、米国の外交関係者は苦々しく見ていたのですが。
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