「完売画家」中島健太氏があえて指摘する“日本美術界”の問題点…巡回展に中島氏の作品を展示しない理由について「日展」が回答

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 明治時代からの歴史をもち、日本美術界の最高峰といわれる公募展「日展」。ところが、今年の「第118回 日展」に出品された画家・中島健太氏の絵「忘れえぬひと」が、12月以降に、各地で開催される巡回展に展示されないことが決まり、波紋を呼んでいる。中島氏は現在、日展の洋画部門の最年少会員でもある。

 中島氏は日展を愛するからこそ、現在の日展の在り方に苦言を呈する。日展では会員の高齢化が進み若手アーティストの関心が離れつつあるのも実情だ。令和の時代にふさわしい公募展のあり方は、どのようなものなのだろうか。中島氏に聞いた。【文・取材=山内貴範】(全2回のうち第2回)

日展に所属する理由は“好きだから”

――中島さんは“完売画家”として有名です。中島さんほど知名度も実績もある画家であれば、日展に所属せずともフリーで充分に仕事ができると思うのですが、なぜ籍をおいておられるのでしょうか。

中島:僕が日展に所属しなくてもやっていけるというのは事実かもしれませんが、所属し続けるのは、シンプルに“日展が好きだから”です。

――明快ですね。

中島:はい。それでも、中山忠彦先生という僕の恩師と呼べる方が日展の中枢にいたときは、大人しくしていたんですよ。中山先生は画家としても素晴らしいし、人間的にも尊敬できる方でしたから、波風を立てたくありませんでした。しかし、中山先生がお亡くなりになってからは、波風を立てたほうが日展のためにはいいと考えるようになりました。

 僕の絵を巡回展から外したと考えられる理事が、「(このような作品が展示されるようでは)日展の将来が心配だ」と言ったようです。それならば僕だって心配しているし、将来を案じている会員はたくさんいると思います。でも、一般会員が言うのは大変でしょう。だったら、画家として一定の知名度も影響力もある僕が、発言していこうと思ったのです。

若手の画家は絵の売り方を教わっていない

――バブル期はデパートなどで絵が次々に売れたので、若手の画家でも活躍できた時代といわれますよね。現在、若手の画家は絵がなかなか売れず、生活が成り立たない例も多いと聞きます。

中島:率直に言えば、日本の美術市場は決して小さいわけではないんですよ。ただ、多くの若手画家は絵を販売する方法を大学で教わっていないので、デビューした後も、どう振る舞っていけばいいのか、わからないんです。

 さらに、美大の教授職も大きな利権になっているので、プロのアーティストが教育現場に招聘されることも稀です。一回きりの講演で呼ばれることはありますが。とにかく、画家として生活していく術を知らないまま、大学を卒業してしまいます。

――アートの世界でアーティストがお金の話をするのも、タブー視されている面がありますよね。

中島:絵の資産性を高めることに対して、真面目に取り組んでいない画家が多いと思います。ポケモンカードだろうが、ビットコインだろうが、資産性が高いと思う人が増えれば買いが入ります。ビットコインなんて、日常生活で使える場面なんてほぼないですよね。にもかかわらず、市場が拡大しているのはそのためです。

 絵に資産性があると思われればそれだけ絵を買う人も多くなるわけで、画家も生活していけるようになります。ところが、現在の日本の美術市場ではそうした話をすることはタブーで、純粋な絵の良さ、物の良さだけで成り立っている部分があると思います。ある意味、日本人の民度が高いがゆえの弊害といえるのかもしれません。

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