日展の話題作「大沢たかおの肖像画」はなぜ巡回展で展示されない? 作者である「完売画家」中島健太氏は「一部の理事によって排除されたとしか思えない」

国内 社会

  • ブックマーク

 明治時代からの長い歴史をもち、日本美術界の最高峰と謳われる公募展「日展」。2025年は、11月23日まで六本木の国立新美術館で「第118回 日展」が開催されていた。だが、同展に出品された画家・中島健太氏の作品「忘れえぬひと」が、今後、全国各地で開催される巡回展では展示されないことが決まり、波紋を呼んでいる。【文・取材=山内貴範】(全2回のうち第1回)

大沢たかお氏をモデルに絵を制作

 日展の洋画部門の最年少会員である中島氏の絵画は、俳優の大沢たかお氏にモデルを依頼して制作されている。中島氏はかつて日展に、女優の佐々木希氏や白石麻衣氏をモデルにした絵画を出品したが、いずれもネットニュースになるなど大きな話題を呼んだ。これを機に、それまで日展に関心がなかった人も会場に足を運んだといわれる。

 大沢氏がモデルになった作品もSNSで大きな反響を集めており、中島氏の創作活動が、熱心な美術ファン以外の人々にとって、芸術に親しむきっかけになっているのは間違いないだろう。実際、日展の会場に足を運んでみると、中島氏の絵の前には人だかりができていた。写真を撮影している人や、顔を近づけて隅々まで鑑賞している人も目立った。

 さて、これほどの話題作にもかかわらず、巡回展で展示されないとはどういうことなのか。中島氏はXに、展示を行わないと決めた理事が、「将来の日展が心配だ」という趣旨の発言をしていたと記している。中島氏はこうした経緯に触れつつ、Xに「ふざけてんのか?」「そら(日展が)衰退するわ」とストレートなコメントを書き綴っている。

 デイリー新潮では中島氏へのインタビューを行い、現在の日展や美術界を取り巻く問題について話を聞いた。

どのような経緯で決まったのかわからない

――日展側が巡回展で「忘れえぬひと」の展示を行わないと決定した背景には、いったい何があったと思われますか。

中島:正直、僕にもはっきりとはわからないのです。日展は国立新美術館で開催された後、全国5ヶ所を巡回します。ただし、展示スペースの規模が施設によって異なるので、すべての作品が巡回するわけではありません。何を隠そう、僕の作品はこれまでも巡回しないことが多かったんですよ。

 話題になった佐々木希さんや白石麻衣さんをモデルに描いた絵も、巡回しなかった。そのときはまだ、自分が“準会員”だったので仕方ないと思っていました。ただ、今は審査員も務める会員なのです。それなのに“外され”てしまいました。しかも、決定に至るまでにどんな意思決定がなされたのか、まったくわからないのです。

 よく、巡回展の会場は「展示スペースが広くないから」といわれるのですが、結局、作品が巡回展で展示されるかどうかの判断は一部の理事の意志に委ねられています。僕の絵は会場に足を運んでもらう動機になっていると思いますし、日展の利益を考えると巡回させるべき作品だと思う。にもかかわらず、巡回しないのは一部の理事から排除されているからとしか思えないのです。

――日展はかつて、「書」の審査で不正が発覚し、大問題に発展したことがありました。現在の審査の公平性は、どうなのでしょうか。

中島:日展の審査は極めて公正です。僕は審査員を務めているのでわかるのですが、少なくとも洋画に関してはフェアに審査されていると自信をもって言えます。審査は公平性が担保されているのに、巡回展に出展される作品を決める判断基準が、不透明になっているのです。

次ページ:会員の高齢化が進む日展

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。