日展の話題作「大沢たかおの肖像画」はなぜ巡回展で展示されない? 作者である「完売画家」中島健太氏は「一部の理事によって排除されたとしか思えない」
会員の高齢化が進む日展
――そもそも、日展の会員にはどのような資格があれば、なれるのでしょうか。
中島:まず、特選を1回受賞すると“会友”になれます。そして、2回目で“準会員”になる。その後、審査員として招聘されると、次の年に“会員”に推挙される仕組みです。僕は一昨年の2023年、39歳のときに日展の会員になりました。現在、洋画部門では最年少会員なんですよ。日展は高齢化が進んでいて、若い人があまり入ってきていません。
――日展は会員の高齢化が進んでいるのですね。
中島:5年くらい前、日展の懇親会の受付をしたことがあるのですが、500人中、29歳以下が1人しかいませんでした。若い人が参入するハードルが高いのもそうですが、応募するメリットを感じてもらえていない状態です。
若手のアーティストの作品発表の仕方も変わってきました。公募展に出すのではなく、直接現代アート系のギャラリーと関係を持ち、作品を展示する人も増えています。
――若手画家の旗手である中島さんも、今の日展に危機感を覚えているわけですか。
中島:僕が日展に話題になるような作品を出している理由は、日展という展覧会が素晴らしいと思っているからです。素晴らしい日展をもっと多くの人に見てもらいたい。芸能人をモデルにした絵を描いた理由の一つが、コロナ禍以降、日展の来場者の減少傾向が顕著なので、ニュースになる作品をつくりたいと思ったためです。
その効果は大きく、SNSを見ても、これまで日展に興味がなかった大勢の方々に足を運んでもらっています。おそらく、巡回展でも展示すれば、各地で同様の光景が見られるはず。にもかかわらず、展示しないというのは、日展の利益を考えると大きな損失です。自ら、日展がチャンスを潰しているように見えます。
描かれているのが著名人だからといって、巡回させない理由にはなりません。僕が許可をとらずに大沢さんを勝手に描いたなら大問題ですが、しっかり許可をとってモデルになっていただき、描いた絵ですから。
日展は決して保守的な公募展ではない
――中島さんは今回の日展出展作を、どのような思いで創作されましたか。
中島:僕は昨年の12月で40歳になりました。40代は芸術家にとって、大事な時期だとずっと思っていました。僕はこれまで男性像を自作として発表したことがなく、新しい挑戦としてぜひ描きたかったのです。日展で発表する絵で描きたい人は誰かと考えたとき、大沢さんのことが浮かんできました。
大沢さんには年代ごとの代表作があります。20代に「劇的紀行 深夜特急」、30代に「世界の中心で、愛をさけぶ」、40代に「JIN-仁-」、そして50代は「キングダム」といった具合です。キャリアを常にアップデートするのが難しい俳優という仕事を続けながら、大沢さんはなぜこうも多くの代表作を出せるのでしょうか。
僕は、40代から先もずっと絵を描き続けていきたい。だからこそ、大沢さんを描くことで得られる学びがあると思いましたし、40代の始まりに描くことができたら、良いスタートが切れるなと。そんな思いを込めて描きました。Xでは、絵を見て涙が出たとポストしている方もいて、嬉しかったですね。
――中島さんの思いはみなさんに届いていますね。実際、私が日展に足を運んだときも、絵に向かって歓声を上げている人がいました。
中島:大沢さんの絵をきっかけに来場した方は、みなさん、日展を面白いと言うんですよ。繰り返すようですが、僕は日展が素晴らしい展示会だと思うんです。油絵だけでも約500点、彫刻、書など数千点が並ぶ公募展なんて、世界的にも珍しいですよ。しかも多くの作品が大判で、作家の力が籠った素晴らしい作品ばかりが並んでいるのです。
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