都内マンション価格急騰でも「焦って買わなくていい」 10~20年後に「隠れ空き家」が爆増するエリア

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「東京の空き家」と聞くと、“朽ちかけた一軒家”を想像する人も多いかもしれない。ところが、都内マンションの販売価格を定点観測し続けるマンションブロガー「マン点」氏によると、実態はかなり違っているという。23区で急増する「隠れ空き家」の実態とは――?同氏のレポートをお届けする。

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23区の空き家、主役は「木造」ではなく「コンクリート」

 東京23区で、持ち主の高齢化や相続難による空き家が増えている。この「空き家問題」を取り上げる際、ワイドショーが好んで映すのが“朽ちかけた戸建て”だ。倒壊寸前の木造住宅、雑草に覆われた庭。理由はその方が視聴者にとって分かりやすく「絵になる」からだが、実態は必ずしもそうではない。

 実は、東京の空き家の主役は戸建てではない。数字を見ればそれがよく分かる。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年)によると、東京23区の空き家総数は約65万戸。この内訳を見ると、意外な事実が浮かび上がる。

「長期不在等の空き家」や「腐朽・破損がある空き家」を合計すると、戸建ては約4.5万戸。対して、共同住宅(マンション・アパート等)は約15.4万戸。実に3.4倍もの違いがあるのだ(次表)。

 空き家の数はマンションやアパートといった「共同住宅」のほうが圧倒的に多いのだが、鉄筋コンクリートの壁に阻まれ、外からはその実態が見えにくいだけなのである。なぜこれほど集合住宅に空き家が多いのか。理由は23区の住宅構造の内訳にある。

「鉄の扉」の向こう側で進む都市の空洞化

 23区の居住用住宅の総数を見ると、共同住宅は約383万戸(73%)を占め、戸建ては約139万戸(27%)に留まる。前者に圧倒的なストック量があるため、空き家の数も必然的に多くなるのだ。

 共同住宅の空き家増加には、大きく2つの理由があると考えられる。

 一つは、賃貸アパートの空室増加だ。人口減少や物件の老朽化で借り手がつかない物件が増えているのである。

 そしてもう一つ、より深刻な要因が分譲マンションの空き家化だ。所有者が高齢化し、施設に入居したり亡くなったりした後、相続人が住まず、かつ売るに売れず、放置されるケースである。

 戸建てなら所有者の一存で解体し、更地にして土地売却がしやすい。しかし、分譲マンションは解体はもちろん、資産価値を上げるための建て替えや大規模修繕といった決定にも「管理組合」での合意形成が必要だ。空き家が増えれば管理費・修繕積立金が滞納され、必要な修繕もできず、建物全体が急速にスラム化していくケースもある。「鉄の扉」の向こう側で、静かに、しかし確実に都市の空洞化が進んでいるのである。

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