都内マンション価格急騰でも「焦って買わなくていい」 10~20年後に「隠れ空き家」が爆増するエリア

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「焦って購入」は危険。二極化する未来を見極めよ

 空き家(=供給)が確実に増える未来において、若い世代はどう動くべきか。新築マンション価格が平均1億円を超え、年収の10倍以上となる異常事態の中(次図)、「今買わないともう買えない」と焦る必要はない。注意すべきは、これからの市場は大きく「二極化」することだ。

 供給過多となる郊外や、管理体制が盤石でない古いマンションは、価格調整局面に入る可能性が高い。一方で、立地が良く管理が行き届いた物件は価値を維持するだろう。つまり、「何でも買えば上がる」時代は終わり、「ババを引く」リスクが高まる時代に入ったということだ。

 かつての不動産バブル崩壊や、リーマンショック後の下落局面で見たように、需給バランスが崩れれば価格は修正される。団塊世代による“住宅放出”が本格化すれば、中古市場の選択肢は確実に広がる。その時こそ、冷静な判断が求められる。

「管理」を買うか、「身軽さ」を選ぶか

 この「空き家時代」を生き抜く戦略は二つある。

 一つは、あえて賃貸を選ぶ戦略だ。空き家(空室)が増えるということは、すなわち「借り手市場」になることを意味する。UR賃貸や優良な賃貸物件を選べば、ライフステージの変化に合わせて柔軟に住み替えられる。「家賃がもったいない」と言われるが、管理不全で売るに売れないマンションを抱え込むリスクに比べれば、「移動の自由」という資産を持つ意味は大きい。高齢期に施設へ移る際も、持ち家の処分に縛られず、スムーズに資金計画を立てられる。

 もう一つは、「管理を買う」視点で中古マンションを選ぶ戦略だ。購入する時は、単に「価格が下がったから」を理由に飛びついてはいけない。そのマンションの管理組合は機能しているか? 修繕積立金は足りているか? 空き家率は高くないか? 空き家が増える時代だからこそ、「人が住み続けたいと思い、適切に管理されているマンション」の価値は相対的に高まる。逆もまた然りだ。

 持ち家か賃貸か、「絶対な正解」は存在しない。重要なのは、23区でさえ「空き家だらけ」になる現実を直視し、デベロッパーや不動産屋の“営業トーク”やイメージに流されることなく、物件の実質的な価値(管理状態や流動性)を見極めることだ。

 賢い選択眼を持てば、空き家時代はむしろ、良質な住まいを手に入れるチャンスにもなり得るのである。

【著者プロフィール】
マン点(まんてん) マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人
X(旧Twitter):https://x.com/1manken

デイリー新潮編集部

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