中国系航空会社の値下げが止まらない 東京→上海→バンコク「往復3万円」便で見たサービス劣化の現場

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ガラガラの上海空港

 到着した上海浦東国際空港を歩いてみた。この空港は3階がメインの搭乗フロアーで、1階も搭乗フロアーになっている。1階に降りると、そこに人の姿はなかった。免税店や土産物店、コーヒーショップなど、すべての店が閉まっていた。このフロアーはいま、使っていないようだった。

 コロナ禍前は、よくこのフロアーで搭乗までの時間をすごした。いつも混みあっていた。利用便が多く、そのやりくりが大変なのか、頻繁に搭乗口が変更された。そのつど、乗客たちの移動が起きる。席が決まっているのに、我先に並ぶ中国人の間から怒鳴り声が響く。館内放送が聞こえず苦労した記憶がある。そのエネルギーがすっかり消えていた。

 今年の前半、2回ほど北京の空港も利用した。時間帯にもよるのかもしれないが、その時も免税店や土産物屋などは半分以上がシャッターを下ろしていた。

 中国系航空会社の値下げの一因がわかった。中国の景気後退のなかで、海外旅行に出る中国人が減っていたのだ。好景気基調に合わせてきた中国の航空会社は、収益構造の変化を強いられている気がした。思えば、日本路線の減便は高市発言以前から始まっていた。たとえば札幌―北京便。以前は中国国際航空が毎日運航していたが、10月から週4便に減っている。

乗客に話を聞くと

 バンコク行きの搭乗口はこれまでと違う顔ぶれだった。欧米人が半分ぐらいを占める。あとは中国人が2、3割。残りが日本人とタイ人といったところか。隣にいた欧米人に感想を訊いてみた。フランス人だった。

「とにかく安い。フランスから往復で500ユーロ(およそ9万円)もしないんだから。サービスは期待しないほうがいいけど、我慢すればなんとかなる」

 と笑った。

 日本人は意外に少なかった。今年の前半に北京で乗り換えた中国国際航空の北京―バンコク便は日本人で埋まっていた。安い料金に惹かれ、日本各地からバンコクに向かう若者が多かった。彼らが皆、北京の空港で乗り換えるからだ。

 しかし今回の上海乗り換え便は、日本人を探すのが苦労するほどだった。男子大学生のふたり連れがいた。

「2万9,000円だったんで買っちゃいました。9月ぐらいだったかな。その後、高市発言で……。ちょっと怖かったんでキャンセルしようとしたら、安い航空券だからキャンセルできないってわかって」

 初老の男性もいた。

「販売するネット系の旅行会社の割引もあって、中国東方航空の南京経由便を2万4,000円ほどで買ったんです。そうしたらその便が運休になって、この上海経由便に。台湾有事の話? 私、そういうことまったく気にしませんから」

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