流行語大賞ノミネート「ぬい活」に店側が頭を抱える“意外な理由”…ぬいぐるみやドールを「持ち込み禁止」にする施設も
流行語大賞の候補にも選ばれた“ぬい活”の一環として、大好きなぬいぐるみと一緒に日常や旅先などで、写真を撮影する人が増えている。ぬいぐるみのほかにも、ドールやフィギュアとお出かけするスタイルも広がりをみせており、そうした愛好家向けのサービスを打ち出す施設もある。その一方で、ぬい活に関連したトラブルも各地で起こっているようだ。
InstagramなどSNSでは、ぬいぐるみやドールと一緒に料理の写真を撮影する人が増え、一般的になっている。アニメやゲームとの「コラボカフェ」などはそうした撮影を歓迎しているところが多いのだが、逆に、そうした行為が問題になるのは、一般客も多く来店するレストランや観光施設である。
ごく普通のレストランのテーブルに、店の許可なくぬいぐるみやドールを並べ、撮影を始めるなどして、トラブルに発展する例が続出しているのだという。【文・取材=宮原多可志】
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いきなりぬいぐるみを撮り始める
「若い女性2人組が、いきなりカバンからぬいぐるみを取り出して、料理と一緒に写真を撮り始めたんですよ。手にしているだけならまだしも、テーブルの上に並べだしたのです」と話すのが、京都にある小料理屋の店主である。“ぬい活”の一環なのか、所構わずぬいぐるみを並べ、写真を撮り始める人を見かけるようになったという。
「彼らは写真をXやInstagramなどに投稿します。それを見たお客さんや、実際に現場に居合わせた人から“不衛生だ”とクレームが来るのです。注意したいのはやまやまなのですが、うちは席数が8席しかない。注意をすると、他のお客様も気持ちがいいものではないだろうし……。とにかく場の空気を読んで自重してくれとしか言いようがありません」
店主が言うには、こうしたぬい活勢はスマホのカメラで何度も撮影をするのだとか。せっかく店内が静かなのに、何度もカメラのシャッター音が鳴り響くわけだ。店主は「料理の写真を1枚撮る程度ならまったく問題ないし、ありがたい」と話すものの、「一度に十数枚も撮るのはどうなのか。さすがに限度を超えていますよ」と嘆く。
寿司店もこうした行為を問題視する。都内のある寿司店では、ぬいぐるみをカウンターに置いて撮影を始めた人がいたのだという。店主はさすがに注意したというが、周囲の客も「ぬいぐるみなんか出すなよ」と不満を言い出したため、場の空気がかなり重くなってしまったそうである。
撮影のために長時間占拠する
撮影に関するトラブルが起こっているのは、一般的なレストランだけでない。アニメ・ゲームのコラボを行っているカフェや、作品の舞台となった“聖地”など、ぬい活に寛容そうに思える場所でも同様のトラブルが発生しているという。その最たるものは、長時間にわたって撮影のために場所を占拠することである。アニメの舞台巡りが趣味のアニメファンがこう話す。
「あるアニメの聖地には等身大のパネルが設置されているのですが、ファンの集団が、バッグを缶バッジなどで飾り立てた“痛バッグ”や、ぬいぐるみを並べて長時間撮影していたのです。後ろに並んでいる人がいてもお構いなしで、撮影にかなり時間をかけていました。撮り直しを繰り返すものだからイライラが募り、せっかくの聖地なのに不満が残るものになりました」
撮影を巡るトラブルは多い。近年多く見られるのが、一層のSNS映えを目指すために、大掛かりな照明などの機材を持ち込むプロ顔負けの人である。三脚を立てて照明の位置も確認するなど準備に余念がないが、セッティングだけでかなりの時間がかかってしまう。“いいね”をもらうための執念は凄まじいと言うべきだが、旅行の目的が“いいね”をもらうためになっているようで、果たしてそれでいいのかと思ってしまう。
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