中日監督が激怒した“幻弾”、ロッテの「プロ第1号」が相次いで消えた…2025年「幻のホームラン」に泣いた選手
2025年シーズン、セ・リーグは阪神・佐藤輝明が40本塁打、パリーグは日本ハム・レイエスが32本塁打を記録し、いずれも本塁打王の初タイトルを手にした。その一方で、不運なアクシデントや疑惑の判定などにより、“幻の本塁打”に泣いた選手も存在した。【久保田龍雄/ライター】
最後の最後まで尾を引いた
逆転2ランが幻と消えたばかりでなく、監督があわや退場という騒動に発展したのが、中日・川越誠司の一打だ。
5月27日のヤクルト戦、1点を追う中日は8回、1死。福永裕基がフルカウントから四球を選んだあと、川越は矢崎拓也が投じた初球、真ん中高めのフォークをとらえ、右翼ポール際に本塁打性の打球を放った。
本塁打なら中日が2対1と逆転するところだったが、鈴木宏基一塁塁審の判定は「ファウル!」。
本塁打とファウルとでは大違いとあって、井上一樹監督は苦笑いを浮かべながらベンチを飛び出し、「(ポールを)巻いているという確信があった」とリクエストを要求した。
審判団が協議中、球場内のビジョンに問題のシーンの映像が流れ、打球が右翼ポール上部を通過しているように見えたことから、本塁打を確信したレフトスタンドに陣取った中日ファンは大歓声を上げた。
だが、「ホームランと確認できる映像が見つからなかった」という理由で、判定は覆らない。
納得できない井上監督は、リプレー検証による決定に対して異議を唱えることが許されていないにもかかわらず、退場覚悟でベンチを飛び出し、山路哲生球審に何事か言葉を発した。スタンドからも「ホームランじゃないか!」の怒号が飛んだ。
中村豊三塁コーチが慌てて止めに入り、退場は免れたものの、井上監督はベンチに戻ったあとも「退場が怖くて言わん監督はおらん」と怒りが冷めやらなかった。
シーズン1号がフイになった川越も「自分でも(ポールを)巻いたと思った。ホームランだと思ったのですごくショックです」と表情を曇らせた。
カウント0-1で試合再開後、川越は四球を選び、1死一、二塁から代打・ブライト健太の左前タイムリーで同点に追いついた中日だったが、その裏、1点を勝ち越されて1対2で無念の敗戦……。幻の2ランが最後の最後まで尾を引いた。
NPB史上初の珍事
プロ1号を放ちながら、無情の降雨コールドゲームに泣いたのが、ロッテの2年目内野手・上田希由翔だ。
7月17日のソフトバンク戦、6回表、2対2。ロッテは2日前に1軍再昇格したばかりの上田のプロ1号2ランなどで一挙4点を奪った。
だが、なおも2死満塁のチャンスで雨脚が強まり、10分以上の中断の末、山本力仁球審が降雨コールドによる試合終了を宣告した。3回終了時にも激しい雨のため、約1時間試合が中断しており、これ以上は続行困難という判断からだった。
この結果、6回表のロッテの4点は無効となり、2対2の5回コールド引き分けに。上田のプロ1号も幻と消え、スタンドのロッテファンから「えーっ!」という不満の声が上がった。コールドゲームでプロ1号が取り消されるのは、NPB史上初の珍事だった。
この間、三塁ベンチで試合再開を待っていた上田は、まさかのどんでん返しに呆然として座り込み、チームメイトたちから肩を叩かれて、慰められていた。
この日、CS「フジテレビONE」の解説を務めたロッテOB・今江敏晃氏も「ホームランですから。ましてや初ホームランですからね…。ある意味持ってますよね。2度目の初ホームランが今後打てるわけですから、なかなかないことですよ」と励ましの言葉を贈った。
そして、“悲劇”から16日後、8月2日の西武戦で、上田は1点ビハインドの4回1死一塁、与座海人から右中間席ギリギリに入る逆転2ランを放ち、2度目のプロ1号を実現する。
「打った瞬間は入るとは思わなかったんですが、歓声で入ったのがわかりました」と歓喜の表情を見せた上田だったが、この日も思わぬどんでん返しが待ち受けていた。
1点リードの7回2死二塁、上田は滝沢夏央の一ゴロを後逸し、同点を許したばかりでなく、なおも2死二塁のピンチで、西川愛也の左前タイムリーが飛び出し、3対4と逆転されてしまう。
試合は延長12回5対5で引き分け、敗戦こそ免れたものの、今度は決勝2ランが幻と消えてしまった。
次ページ:プロ野球生活で1本ぐらい打ちたいなと思っていたので
[1/2ページ]


