「頭と胴体が離れ離れに…」 北朝鮮の「公開処刑」最新事情 脱北者は「『ナルト』を見たことが脱北のきっかけ」
みんな金総書記が嫌い
家族と生き別れてまで脱北を決意させるほど深刻な経済事情の悪化は、犯罪の数も増加させた。再び先のキム氏が語る。
「23年3月、これも碧城郡でのことです。師範大学に通っていた学生が強盗をしようとしたところ、その家の住民女性と鉢合わせて殺してしまい捕まった。野菜畑での公開処刑で射殺されましたが、内臓が飛びだしてひどいありさまでした。この大学生は、物価の高騰で食い詰めていたとか。また、道端で倒れてジッと動かない餓死寸前の人を見たこともあります」
こうした惨状を招いた金総書記に、パク氏は怒りをあらわにする。
「北朝鮮にいた時から、彼のことが嫌いでした。私たちが食い詰めているのに、金のかかる閲兵式など開いているからです。家でも親が金総書記の悪口を言っていたし、内心ではみんな彼の政治がろくでもないからこうなっていると分かっているのです」
キム氏も言う。
「20年以降に増えた凶悪犯罪の中には、明らかに党幹部や警察官など権力者を狙ったものが少なくありません。表立って党を批判することはできませんから、民衆の怒りがそうした形で噴出しているのではないかと思います」
「NO FENCE 北朝鮮の強制収容所をなくすアクションの会」の宋允復(ソンユンボク)・副代表が、現状を補足する。
「中朝貿易も現在は再開していますが、例えばコメ価格が10月時点で昨年と比べ4~5倍に値上がりするなど、苦しい食糧事情が続いています。また、最近でも各国に派遣されていた諜報要員が呼び戻され、海外に情報をリークしていたとの疑いで20人近く処刑されたという話がありました。極刑で体制の引き締めを図る姿勢は、簡単には変わりそうにありません」
苛政は虎よりも猛し――そんな言葉も口にできないかの国の近況なのだ。
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