ジョン・レノン銃撃犯は何を語ったのか 刑務所で緊迫の対面…「陰謀論」を一蹴した一言
ジャーナリスト・青木冨貴子氏インタビュー
1980年12月8日にジョン・レノンを襲った凶弾の謎を追い続けたジャーナリストの青木冨貴子氏。事件から約38年後の2019年3月21日、ついに銃撃犯マーク・デイヴィッド・チャップマンと刑務所で対面を果たす。近著『ジョン・レノン 運命をたどる ヒーローはなぜ撃たれたのか』(講談社)を出した青木氏に、その時の様子を聞いた。(全2回の第2回)
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広大な面会室には小さな敷居が設けられ、厳しいセキュリティのなかで支給されたのは短い鉛筆と小さなメモ用紙だけだった。
「扉が開いて、60歳くらいの白人が入ってきたんです。最初は何も言わず、じっと見つめ合いました。私が『この人なのかな』と思ったら、向こう(チャップマン)がニコッとして、手を差し出してきたんです。逮捕当時に公開された写真とは、全然違う人になっていました。以前よりずっとやせて普通の男性でした」
最初は緊張を解きほぐすために生活ぶりなど聞いたが、チャップマンはすぐに神の話を始めてしまったという。
「なるべく、神の話にいかないように、角度を変えて質問したりしました。ひとつ、びっくりしたのは、『ここまで来たのに、無駄足を踏ませるわけにはいかない。今回は(妻の)グローリアにインタビューしたらどうか?』と言ってきたことです」
この提案のおかげで、後日、妻グローリアに詳しくインタビューすることができた。だが、チャップマン本人については毎回、「あなたはカリフォルニアのドキュメンタリー・チームの次だ」などと言い続けた。
「最初はわかりませんでしたが、何度もそうしたやりとりをするうちに気づいたんです。インタビューという“ニンジン”をぶら下げられて、私はずっと誘導されてきたようだ、と。なぜ、そんなことをしたかというと、インタビューをしたら、それで私と会うことが終わってしまうかもしれませんから」
結局、公式のインタビューは実現しなかったが、知人として何度も面会するうちに、聞きたいことはほぼ聞き出せたと思えるようになった。
「最後のほうに聞いたんです。『あなたは誰かに言われてあのことをやりましたか』と。彼は『全くそんなことはない』と言ってきました。いろんな陰謀論はありますが、『自分がやった』とはっきり言っているんです」
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