ジョン・レノン銃撃犯は何を語ったのか 刑務所で緊迫の対面…「陰謀論」を一蹴した一言

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「運命だったのかな」

 チャップマンがジョン・レノンを銃撃した動機は、刑務所内で作成し囚人に配布している「パンフレット」に本人が詳しく記している。その内容は青木氏の著作にも掲載されている。

「読んで、びっくりしましたよ。自分がどうやって現場のダコタに行って、どうやって待っていて、どうやって引き金を引いたかなんて、よくぞこんなことが書けるなと思いましたね。自分の生い立ちや神のことも書いていますが、改めて理解できないところにいる人だと思いました」

 青木氏は著書の中で、夫の作家・ピートによるジョン・レノンへのインタビュー、青木氏自身によるオノ・ヨーコへのインタビューや関係者の取材、さらには膨大な資料をひも解き、事件の核心に迫っている。

「どういう男か、なぜ事件が起こったのか、一言では言えないですね。精神科医は『彼はあらゆる兆候を持っている』と言っていますから。簡単に答えが出ることではない。今回、私はこの著書のなかで、40年以上かけて取材してきたことを書いています。それを読んで感じ取って考えていただければと思います」

 ジョン・レノンの45回目の命日となる今年12月8日、青木氏は都内で『ジョン・レノン 運命をたどる』の刊行記念として1日限りの特別展を開く。夫ピートの弟で写真家のブライアン・ハミルが撮ったジョン・レノンの秘蔵写真が公開される。

「いろんな意味で、私の運命と絡んでいるんです。ピートがジョンと知り合いだったとか、ジョンのピートにあてた手紙が出てきたとか、ピートの弟がジョンの写真を撮っていたとか、色んなものが蔦のように絡んでいる。そこに何か運命のようなものを感じています」

 最後に改めて、なぜ、ジョン・レノンが撃たれたのか、聞いてみた。

「運命だったのかなと思いますね。英雄って、短命でしょう。どうしてもそういう感じがするんです」

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 第1回【「あなたの写真を送ってください」ジョン・レノン銃撃犯から戦慄の手紙に「怖かった」「やばいな」】では、青木氏がチャップマンから受け取った「狂気」の手紙などについて語っている。

青木冨貴子(あおき・ふきこ)
1948年、東京生まれ。作家。1984年渡米し、「ニューズウィーク日本版」ニューヨーク支局長を3年間務める。1987年作家のピート・ハミル氏と結婚。著書に『ライカでグッドバイ――カメラマン沢田教一が撃たれた日』『たまらなく日本人』『ニューヨーカーズ』『目撃 アメリカ崩壊』『731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く―』『昭和天皇とワシントンを結んだ男――「パケナム日記」が語る日本占領』『GHQと戦った女 沢田美喜』など。ニューヨーク在住。

※特別展は12月8日9時~18時 東京・代官山ヒルサイドプラザ(入場無料)で開かれる。

デイリー新潮編集部

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