米デトロイト「低所得エリア」で感じたうらやましさ 日本に無くて “高貧困率のラストベルト”にあった光景
クリスマスシーズンを迎えたものの、日本では物価高と少子化が重なり、街の消費にもどこか元気がない。では海の向こうはどうか。消費経済アナリストの渡辺広明氏がアメリカ中西部のデトロイトをのぞくと、“空気の違い”が確かにあった――。
***
【写真8枚】デトロイトで見た「うらやましい光景」 ほか 今後日本が向かうべき方向は
世界経済に多大な影響を与えるアメリカ経済は、わが国の経済とも強く連動し、一蓮托生ともいえる関係であるのは知られたとおり。国の経済の体力を表す指標であるGDPを比べてみると、日本では約55%を個人消費が占めているが、アメリカではそれが約70%にもおよぶ。個人消費は、雇用統計とともに、政府の進むべき方針やFRBの金融政策などを左右するというわけである。
個人消費は筆者の専門分野。年末商戦の入り口となるブラックフライデーセールを控えた11月中旬、デトロイトの小売業やショッピングモールを2日間で15カ所、駆け足で巡ってみた。
なぜデトロイトへ?
なぜ、デトロイトなのか。アメリカ中西部のデトロイトは、自動車メーカーのビッグ3(GM、フォード、旧クライスラー)が本社を構え、かつてはアメリカ製造業の圧倒的な中心だった。しかし自動車製造拠点を中心とする多くの産業は海外との競争に敗れ、1970年以降の長い間、錆びついた“ラストベルト”と呼ばれるように。いわばモノづくり大国アメリカの衰退を象徴する都市といえる。現在は回復基調にあるとはいえ、その傷痕は色濃く残っている。
そして「個人消費」に目を向けると、「人口が多くて所得は平均以下、貧困率が高くて消費意欲が弱く、節約志向が強い」という特徴があり、旺盛な個人消費が基本となるアメリカにおいては、少し毛色の違ったエリアといえる。同時に、現在、世界最大の小売業で中間・低所得者層を客層としていた「ウォルマート」で富裕層の利用が増える傾向があると耳にした。そんなアメリカ全体で節約志向が浸透するタイミングで、その先行指標となる都市がデトロイトだと考えた次第である。
数字でその特徴を見てみると……デトロイトは近郊エリアも含めると、人口はおよそ400万人で、全米14位前後の人口集積地となる。市の中央値世帯年収は約 3.9万ドル(約600万円)と全米のそれ約8.3万ドル(約1,300万円)を大きく下回る(それぞれ23年と24年のデータ)。市の貧困率は31%で全米のおよそ3倍だ。
住民の仕事、産業の中心はいまも自動車で、デトロイトが位置するミシガン州全体では全米の自動車生産の約20%を担っている。地域経済の70%以上が何かしらの形で自動車産業に依存しているという説もある。富裕層の多い郊外と、低所得者層が多めの市街地が混在するエリア構成で、消費の二極化が進んでいる都市だといえるだろう。
[1/4ページ]



