米デトロイト「低所得エリア」で感じたうらやましさ 日本に無くて “高貧困率のラストベルト”にあった光景

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“消費の二極化”は合わない日本、どうすれば

 筆者の感覚的には、デトロイトで見たアメリカ的な“消費の二極化”は、日本にはなじまないように思う。

 実際、日本は1980年代から1990年代初頭のバブル崩壊まで、分厚く存在した中間層が働き消費することで世界トップクラスの経済大国となっていった。平成に入りバブルが崩壊し、その後遺症を乗り切った後は、企業業績や投資分野こそ好調に回復したものの、いわゆる「富裕層優遇→経済成長→貧困層救済」のトリクルダウンは起きず、国全体としては平成デフレが定着してしまった。

 こうした反省を踏まえると、今後の日本が取るべき方向性としては、中間層の底上げが必須だろう。中間層・低所得層の所得が増える→消費拡大→経済成長という「トリクルアップ」的な政策や企業努力が必要であり、中間層から富裕層へ、低所得者層から中間層へと階層が上がっていくようなサイクルが求められる。

「くら寿司」しかなかった

 最後に、少し話題がそれるが気になったことを――筆者が見た限り、デトロイトには、日本の流通業界のチェーンとしては「くら寿司」しか出店していなかった。

 ハイウェイのインターチェンジを降りると、マクドナルドやバーガーキング、ウェンディーズ、メキシコ発祥のタコベル、ピザチェーンのリトルシーザーズといった飲食店が並んでいる。日本の外食チェーンがアメリカマーケットをリサーチすれば、さまざまなハードルはあると思われるが、ビジネスチャンスは十分あるのではないかと感じた。

 クリスマス催事の集中的な展開や、アパレルなどで地元スポーツチームとコラボした「地域のファン作り」など、勉強になる点も多かった。日本の個人消費のこれからの進化のあり方や、日本企業のアメリカ進出の可能性についてなど、マーケターとして今後しっかり考えていきたいと思わせてくれたデトロイト流通視察だった。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、TOKYO FM『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ。近著に『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(馬渕磨理子氏と共著、フォレスト出版)がある。

デイリー新潮編集部

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