崩壊が進む「軍艦島」を放っておくとこうなる…すぐ近くにある「100年後の軍艦島」の知られざる姿
軍艦島こと端島が「明治日本の産業革命遺産」の一部として世界文化遺産に登録されて10年。昨年には軍艦島を舞台にしたドラマも放送された。いまや長崎を代表する観光地であり、上陸ツアーは人気のあまり予約が取りづらい状態が続いている。しかし、実は軍艦島、あの姿をいつまで維持できるかわからないという大問題を抱えている。一方、すぐ近くには、放棄されて構造物が崩れ落ち、「100年後の軍艦島」と呼ばれる島が。その島と軍艦島に上陸するツアーを企画し、「軍艦島の建物を少しでも多く残したい」という人物も現れた。【華川富士也/ライター】
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【貴重写真】冒頭掲載のカットは2014年撮影。それがおよそ10年でボロボロに…軍艦島に迫る危機がよく分かる
2015年に一部が世界遺産に登録された軍艦島。閉山から50年を迎えた2024年10月からは、軍艦島を舞台にしたドラマ「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)が放送されてヒットした。ドラマの効果もあり、放送から1年経った現在でも上陸ツアーは満席だらけで予約困難だ。あるツアー船の船長によれば「ドラマが放送されて、お客さんは増えたなんてもんじゃないよ」と軍艦島人気に驚きを隠せない。
長崎市が今年5月に発表したデータを見ると、2023年度(令和5年)の軍艦島上陸者数は17万8千人余り。2024年度、2025年度の客数が増えているのは間違いなく、いまや長崎市の目玉スポットである。廃墟だらけの元炭鉱の島は日本有数の観光地となり、市の観光収入に大いに貢献している。
そんな軍艦島が「遺構保存」という大きな問題を抱えているのをご存知だろうか。実は、あの特徴的な姿をいつまで維持できるかわからないのだ。
およそ30棟の半数以上が著しい劣化
軍艦島は常に潮風を浴びている上に、台風が来ると強い風と高い波に襲われる。潮風と海水に含まれる塩分は、鉄筋コンクリート造建築の最大の敵である。建物に染み込んだ塩分が鉄筋を腐食し、劣化を早めていく。弱ったところに強い風が吹けばひとたまりもない。
国内最古の鉄筋コンクリート造集合住宅であり、築109年を迎える30号棟は、じわじわと崩れ落ちており、西側の壁や床の崩落が甚だしい。またかつて島にあったモダンな映画館は、1991(平成3)年の台風で大破し、世界遺産登録の一報が届いた時には瓦礫の状態になっていた。
現在、軍艦島には30棟ほどの大型建築物があるが、半数以上は耐震性能が著しく劣化しているという。全てを保存するには莫大な予算がかかる。しかし当然のことながら予算は限られており、長崎市は優先順位をつけて遺構を保存することにした。その中で軍艦島の特徴的なシルエットの大部分を担う「居住施設遺構」は、優先度が一段落ちた扱いになっているのだ。
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