旅の思い出をネットにアップしたら「心霊写真だった」 カメラ好き女子大生が映した“季節外れの怪異”とは【川奈まり子の百物語】

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【前後編の前編/後編を読む】心霊写真を撮ってしまった女子大生…写りこんだ影の正体は「いるはずのない知った顔」 怨念は拡散されたのか

 これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集し、語り部としても活動する川奈まり子が世にも不思議な一話をルポルタージュ。今回は、学生時代の写真にまつわる不思議な体験を語る女性を紹介する。

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 読者の中にも、インターネットの画像素材ストックサイトを利用した経験のある方がいることだろう。PIXTAやAdobe Stockなど数々あり、写真やイラストの需要に応えている。

 画像の需要者がいれば供給者もいるわけだが、未佳さん(仮名)は学生の頃から供給側だった。

 都内の美大で写真を学んでいた彼女は、ストックサイトに写真やイラストを提供することで、お小遣い稼ぎに励んできたのである。

 自主的に写真や絵の技術を研鑽しながら実利が得られ、また、お金になればなるほど創作のモチベーションも上がる、非常に良いアルバイトだったとか……。

 卒業後は約10年にわたって転職を繰り返し、中学校の美術教師、WEBデザイン会社の契約社員、写真館のアルバイトなどさまざまな仕事を渡り歩いたそうだが、その間もストックサイトに素材を提供しつづけていたというから、よほど向いていたのだろう。

 未佳さんは現在35歳。

 3年前に夫と起ち上げた映像制作会社で動画編集とスタジオ経営に勤しむ日常の中、イラストこそ滅多に描かなくなってしまったが、写真は今でもコンスタントにストックサイトにアップしているとのこと。

「私は画像ストックサイトの黎明期から関わってきたことになります。だからトラブルに巻き込まれてしまったことも少しはありますよ。他の提供者に作品をパクられたり、1点も売れていない自作の有料素材がネットで使われているのを見つけたりして」

 この仕事に著作権侵害や不正使用はつきものなのだと未佳さんは苦笑した。

「せめて私は自分の写真や絵には責任を持とうと思っていて、誰かの作品を模倣しないのはもちろんのこと、ポリコレ的にも問題がないように気をつけています。利用者に対する責任もありますから、いっぺんストックサイトに上げた作品は滅多なことでは取り下げませんし……。出したものを削除したのは1回だけです。あのときは、心霊写真だったことに気がついてしまったので仕方なく……」

 ことは彼女の大学生時代に遡る。

トワイライトタイム

 大学2年生の冬休みに、彼女は同級生3人と共に北海道の函館市を旅行した。

 3泊4日のうち最初の2泊は函館出身の子の実家に泊めてもらい、最後の夜だけ市内のホテルに泊まる計画を立てた。

 気の合う同性の友人同士の旅で、ずいぶん前から愉しみにしていたという。
 
 旅の滑り出しは順調だった。

 函館に実家のある同級生の両親、ことに母親は彼女たちの来訪を歓迎し、自家用車で観光名所に送迎してくれた他、初日の夜はご馳走を作ってもてなしてくれた。

 2日目には有名な夜景を眺めた後、市街地の名店で函館グルメを堪能した。

 函館といえば夜景である。函館山からの眺望が素晴らしく、兵庫県の摩耶山、長崎県の稲佐山と並んで日本三大夜景のひとつに数えられている。

 函館の夜景は日没から30分前後のトワイライトタイムが最高だと言われている。

 日没寸前から直後にかけて、空が青から紫のグラデーションに彩られる。

 特に冬場は空気が澄み渡り、街の灯りが美しく粒だって輝くのだ。ただし冬季は16時過ぎには日が沈んでしまうし、観光客で込み合うので、早めに行って場所を確保した方が良い。

 そういう事情に詳しい地元っ子がいたのが幸いして、未佳さんたちは15時半過ぎに函館山の展望台に到着した。

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