「老婦人を助けるために、むせ返る煙の中を手さぐりで…」 “香港マンション火災”で危険を顧みず行動した夫婦の勇姿

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15時間待ち続けた夫婦

 絶望するほど長い時間、救助を待ち続けた人たちもいた。

「21階に住んでいたある夫婦は、爆竹のような音で異変に気付いた。火災報知器は鳴らないものの、外の足場が燃えていた。逃げようとしましたが、ドアを開けると廊下が煙で充満している。部屋に戻り、濡れタオルでドアの隙間を塞ぎました。そして濡れタオルで口と鼻を覆い、浴室に避難していたようです」(前出のジャーナリスト)

 互いに励まし合いつつ、待つこと15時間。

「朝5時に救助されるまで、消防署からは“できるだけ早く救出する”と連絡を受け続けていたといいます。さらに、この夫婦にはもう一つ偶然が味方していた。前の週に、窓を覆っていた発泡スチロールが撤去されていたのです。おかげで、室内への延焼がある程度防がれたのかもしれません」(同)

 このように、猛火の中で、想像を絶する救出劇が展開されていたのである。

汚職の疑惑

 もっとも、火事自体は鎮火したものの、香港ではまた別ののろしが上がっている。

 先の西谷氏が言う。

「当局は火事発生後、すでに10人以上の工事関係者を逮捕していますが、これは香港市民の怒りを業者に向けさせるためだと思います。というのも、当局と業者との間で汚職があったのではないかとの疑惑が浮上しており、政府批判の火種になっているからです。当局の責任を追及したある男性は“扇動行為”のかどでさっそく拘束されてしまいました。この男性が掲げたスローガン“四大訴求”が、6年前の民主化デモにおける“五大訴求”を想起させ、当局から危険視されたのでしょう」

 本当に怖ろしいのは火事か、それとも……。

週刊新潮 2025年12月11日号掲載

ワイド特集「エッホエッホ」より

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