本当に有吉弘行は「最も愛されている」芸能人なのか? 「タレントイメージ調査」圏外でも紅白司会に3年連続で抜擢された理由
有吉は愛されている?
NHK「紅白歌合戦」には音楽界の現状が表れる。一方で司会陣にも芸能界の現在地が反映される。今年の司会の有吉弘行(51)と綾瀬はるか(40)は同局が視聴者から最も支持が得られていると判断した芸能人なのだ。この2人に「あんぱん」のヒロイン・今田美桜(28)と鈴木奈穂子アナウンサー(43)を加えた4人が司会を担当する。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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NHKは紅白の司会に有吉、綾瀬、今田を起用する理由について、こう説明した。「いま日本のお茶の間で最も愛されているお三方」(小池明久・紅白実施本部長)。朝ドラこと連続テレビ小説「あんぱん」(9月末終了)のヒロインだったこともあって起用される今田を除くと、本音に違いない。
紅白は最大級の支持が得られそうな芸能人を司会に据える。たとえば2020~22年まで司会を務めた大泉洋(52)もそう。司会は出ずっぱりで視聴率に大きく影響するから、人選には慎重になる。
3年連続3回目の司会となる有吉の場合、いま最も愛されているだろうか。広告代理店やテレビ局がCMや番組のキャスティングの参考にするビデオリサーチ社の「タレントイメージ調査」(7月期)を見ると、有吉の名前はベスト20にない。調査対象は関東の12~69歳の男女約5000人。信頼性は高いとされている。
1位はサンドウィッチマンで5位が司会経験済みの大泉洋。6位はNHKの情報番組「あさイチ」(平日午前8時15分)の司会を務める博多華丸・大吉である。
7位は千鳥、9位はチョコレートプラネット。1983年に司会経験済みのタモリ(80)は10位。いずれも有吉を超えている。2017~20年の司会だった内村光良(61)も14位に入っている。
有吉は完全に劣勢だ。NHKの目は曇っているのか。いや、レギュラー番組はBSとラジオを含めると13本もあり、芸能界屈指の数を誇る。人気のない人を使うほどテレビマンはお人好しではない。日本テレビ「有吉ゼミ」(月曜午後7時)など有吉の番組は、全年齢層を調査対象とする個人視聴率も良いが、40代以下に対象を絞ったコア視聴率が際立って高いのだ。レギュラー番組が多いのも納得である。
有吉が20位内に入らないタレントイメージ調査はほぼ全年齢層を対象とする。それだと20位内に入らないが、調査を40代以下に限定すると、支持は分厚い。これが有吉人気の実相なのだろう。
有吉は古い価値観にあきれたり、主体性がなく流行を追うような人を嘲笑したりする。個性と多様性を重んじているところが持ち味の一部。それに拍手を送るのは比較的若い世代のほうが多いのではないか。
有吉は毒舌家だが、やさしさがある。若手芸人らを酷評する際には笑みを絶やさない。将来の可能性も決して否定しない。苦労人だからだろう。1996年に日本テレビ「進め!電波少年」でのヒッチハイクで人気者になりながら、たちまち鳴かず飛ばずとなり、再浮上まで約10年もかかった。照れ性なのか有吉は苦労話をまずしないから、この辺の事情を知らない人もいるのではないか。
「有吉のギャグでは笑えない」との批判もよくある。確かにそうだ。もっとも、お笑い系の名司会者であるタモリ、笑福亭鶴瓶(73)のギャグもクスリとする程度。振り返ると、1980年代から、お笑い系司会者であろうが、必ずしも笑いは求められていない。視聴者には明るく番組を進めてくれる程度でいいのだろう。
有吉自身が「てっきり去年までと思っていた」と語っているが、司会は今年限りとなるのではないか。有吉に責任があるわけではなく、外部の人間による司会は3年までに終わるのが一般的なのだ。
例外は人気絶頂期の嵐による2010~14年までの5年連続と内村光良の2017~20年までの4年連続くらい。古舘伊知郎(70)は1994~96年の3年連続、大泉洋も2020~22年までの3年で司会を離れた。
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