賃金が上がらず失業率は上昇… 中国経済は「日本のバブル崩壊後のよう」 習近平は激怒でも「反日デモ」が起きない理由

国際 中国

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【前後編の後編/前編からの続き】

 どこまで恫喝すれば気が済むのか。暴走する中国の報復が止まらない。再び外交官が威嚇に出たかと思えば、経済制裁の挙げ句にパンダ引き揚げまで示唆する始末。とうとう米トランプ大統領に告げ口まで始めたが、かような“ならず者国家”を日本はどう扱うべきか。

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 前編【「報復は中国人の首を絞める」 在日中国人経営者は「会社の経営も危ないね…」 渡航制限で「8割以上がキャンセルに」】では、中国政府による渡航制限によって、在日中国人経営者が被っている損害について報じた。

 他にも、2年前に福島第一原発の処理水を理由に中国が中止、今年6月に一部再開を発表した日本産水産物の輸入が、11月19日に再び事実上の停止となった。

 だが、北海道紋別市にある「丸ウロコ三和水産」の山崎和也社長に聞くと、

「正直、今のところ影響はありません。これまで2年以上も禁輸措置が続き、弊社はホタテの輸出分をアメリカ、ベトナム、タイ、台湾などに分散させ対応してきました。禁輸前に中国への販売量が増えていたのは事実ですが、今後も同様の政治的圧力で禁輸が起きるのを見越して、仕事を進めていくしかありません」

 オホーツク海産の天然モノは、中国のほうが欲していた逸品だったという。

「ホタテは鮮度が非常に大事ですが、冷凍しても日本産は食感が優れている。この品質の良さを中国の業者は評価していて、生で食べるだけでなく加工して欧米へ販売していた。禁輸期間中は加工場を東南アジアに移転せざるを得なかったそうで、彼らは“日本の水産物を中国に入れたい”というのが本音でしょう」(同)

 同じく道内の函館市にある「きゅういち」代表取締役社長の餌取達彦氏も、

「どの水産業者も中国市場を前提としたビジネスは進めていないと思います。今回の禁輸措置は残念ですが“またか”と冷静に見ている。ホタテを2次加工する中国の業者は困っているはずです。中国政府は気にしていないのかもしれませんが、自分で自分の首を絞めている面がありますね」

「中国人は日本の水産物を食べたがっている」

 愛媛県宇和島市で水産物の輸出入や加工を行う「イヨスイ」の荻原達也社長は、

「中国人は食にぜいたくで、日本へ観光に来る彼らはすしをはじめ和食をよく食べる。東京の豊洲市場でも高価な海鮮丼がよく売れています。本音として中国人は日本の水産物を食べたがっていますね。実際、中国の業者から“日本の魚を買いたい”“売れるようになったらよろしく”という話が来ていましたが、今回の禁輸措置を受けて“困ったな”と言っていました」

 度重なる日本への報復は、中国にとって“諸刃の剣”になると指摘するのは、元朝日新聞台北支局長でジャーナリスト、大東文化大教授の野嶋剛氏だ。

「中国が日本への経済制裁で使える主なカードは、『レアアースの輸出規制』と『日本企業へのビジネス規制』の二つ。前者を行えば貿易戦争になり、これまで中国がWTO(世界貿易機関)でも主張してきた自由貿易を守るというコミットメントから外れてしまう。現状、レアアースのカードを切るかは五分五分だと思います」

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