クマ駆除に暗雲の「ハーフライフル規制」に北海道では“特例”が出たが…ほかの地域では「そもそも銃でクマを駆除できるハンターが少ない」「若手の後継者もいない」現実
第1回【「クマ駆除」を担う新人ハンターが“命の危険”に晒される懸念も…「長野県中野市4人殺害事件」がカゲを落とす「ハーフライフル規制」とは】からの続き──。今年3月1日に改正銃刀法が施行された。その結果、クマの駆除に必要だとされる「ハーフライフル銃」の所持許可が厳格化されてしまった。(全3回の第2回)
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【写真】「お願いだからこっちを見ないで…」 山道では絶対に遭遇したくない瞬間…人間と目が合った瞬間のツキノワグマの凍りつくような眼差し
狩猟に詳しい関係者は「ハーフライフルはクマの駆除に不可欠な猟銃であり、特に経験の浅いハンターこそ持つべき銃です」と言う。
「ところが、2023年5月に長野県中野市で4人が殺されるという殺人事件が発生しました。当時31歳の男が2人の女性をサバイバルナイフで刺殺し、2人の警察官を猟銃で射殺したのです。その際に使われた猟銃がハーフライフルでした。事態を重く見た警察庁は2024年の通常国会に改正銃刀法の法案を提出します。そこには『散弾銃を10年保有した者がハーフライフルを保有することができる』と改められていたのです」
改正前のハーフライフルは散弾銃と同じ扱いだった。そのため新人ハンターでも保有することができた。だが改正銃刀法が施行されると、新人ハンターは散弾銃しか保有できない。これに猛反発したのが北海道猟友会だ。
「散弾銃の有効射程距離はおよそ50メートル。一方、ハーフライフルは150メートルです。北海道猟友会は『50メートルの距離からヒグマを狙うのは危険だ』と反論しましたが、ツキノワグマでも同じです。経験の浅いハンターこそハーフライフルが必要であるにもかかわらず、この改正銃刀法が『ハーフライフルは10年間所持できない』と定めたことが大問題なのです」(同・関係者)
全国に広がらない特例
それこそベテランのハンターならライフルを所持することができる。ライフルの射程距離は1キロを超えるものも少なくない。
ただし、北海道猟友会の切実な訴えは、最終的には国を動かした。特例を認めさせることができたのだ。
「北海道の状況を理解した警察庁は、『ヒグマやエゾシカの駆除に従事する者』に加え、『都道府県が被害防止に必要だと通知し、ハンターが通知が出た都道府県で狩猟を行うと申告する』場合は、新人ハンターでもハーフライフルを所持できると特例措置を拡大したのです。北海道の狩猟関係者が安堵したのは言うまでもありませんが、気になるのが他の都府県に特例が広がっていないことです」(同・関係者)
クマの被害に悩まされている東北地方の関係者は「北海道とは違い、こちらでは銃でクマを駆逐できるハンターが昔から少ないのです」と言う。
「基本的には罠が主体という歴史があります。そのため各地の猟友会に意見を求めても『そもそも銃を使うことがないし、後継者不足で新人ハンターもいない。改正銃刀法が施行されても影響は少ない』という回答が大半を占めたのです」
だが、これで終わりとするわけにはいかないという。前出の狩猟に詳しい関係者は「クマの駆除を進めるためには結局、地元に密着したハンターの地道な育成しかないのです」と言う。
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