秋ドラマの明暗 「じゃあつく」は“間口の広さ”で圧勝、三谷幸喜脚本「もしがく」はなぜ大コケしたのか
「もしがく」大失敗の構図
放送をビジネスとして考えると、大失敗したのはフジテレビ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)」(水曜午後10時)。個人視聴率は13位で1.9%(世帯3.3%)。コアも極端なまでに低く、14位にとどまっている。
自分たちで間口を狭くしたからだ。まず登場人物たちが生きている世界を1984(昭59)年の東京・渋谷にした。当時の渋谷とその空気感を知るのは50代後半以上。それ以下の世代が脱落しやすくしてしまった。
さらに全編を通じてのテーマは演劇活動。演劇も幅広く親しまれているとまでは言えない。さらに登場人物たちの生活と仕事の場はストリップ劇場。女性や若い人には縁遠い。これで多くの人に観てもらうのは無理だ。間口が狭すぎる。
全体の構成も万人受けしそうなものではなかった。10月1日放送の初回は、主人公の演出家・久部三成(菅田将暉)やダンサー・倖田リカ(二階堂ふみ)ら20数人の登場人物の紹介に長い時間を割いた。
今のドラマは初回から本題に入るものがほとんど。見せ場も設ける。「じゃあつく」もそうだった。しかし「もしがく」は違った。間口の狭さに加え、初回のスローテンポがあったので、視聴者が大量に逃げてしまった。
初回の個人視聴率は3.1%(世帯5.4%)と上々だった。コアも悪くはなかった。三谷幸喜氏(64)が久しぶりに脚本を書いたこのドラマは視聴者から期待されていたのだ。しかし同8日放送の第2回は個人2.2%(世帯4.4%)。観るのをやめてしまった人が多い。その後、低迷が続く。
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