原宿に来た2人の家出少女 雑踏で“白い手”に肩を触られ…翌朝、ホテルから幼馴染は消えていた【川奈まり子の百物語】

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家出の終わり

 ――それから7年あまりの歳月が過ぎた。

 現在21歳になった穂乃花さんは、奨学金を受けて関東圏の公立大学に進学し、学生寮で暮らしながら勉強とアルバイトに励む日々を送っている。
 
 そんな中、何か思うところがあって、私に体験談をご応募されたのである。

 口調に知性が滲み、生真面目で礼儀正しい、将来有望な若い女性で、一見した印象からは、中学生のときに家出したことがあるようには思えなかった。

 お聞きした家庭環境はお世辞にも良いとは言えず、両親は彼女が大学に進学することに前向きではなかったという。

「きっと大変な努力をなさったのでしょうね」と私が言うと「家出したとき、うんと叱られて反省したのが良かったんですよ」と彼女は、はにかんだ表情で応えた。

「学校の先生や、リナのご両親が、その後、リナの分まで頑張らなくてはいけないと叱咤激励してくださいましたし……。それと、正直なことを言うと、早く田舎を出ないと辛すぎると思ったんですよ。やっぱり、家出の件でイヤなことを言ってくる近所の人や親戚もいました。勉強して東京の大学に入ったら、ああいうコミュニティから離れられますから」

 およそ7年前、ホテルから電話した後、彼女は、すぐに家に連れ戻されたという。

 迎えに来たのは母と2つ上の兄だった。

 母は泣き、兄は終始無言で、家で彼女を出迎えた父からは平手打ちされた。

「もちろん、お金は全部リナの家に返しました。使ってしまった分まで、私の貯金から足して、50万円きっかり。それと菓子折りを持って両親とリナの家に謝りに行ったんです。そのとき、リナのお父さんやお母さんからいろいろ訊かれて、もちろん正直に答えたし、警察でも経緯を何度も話したのです。……でも、リナは見つかりませんでした」

幼馴染の神隠し

 東京の所轄署の担当刑事に、2人で泊まったホテルの防犯カメラも見てもらったそうだ。

 ところが、リナが出てゆくところは録画されていなかったとのこと。

 また、ホテルの他の宿泊客にも怪しい動向を見せた人物はいなかったそうだ。

 それを聞いて、私は思わず興奮して「まるで神隠しですね」と口走ってしまった。

「ああっ、失礼しました! ご親友の身に実際に起きたことなのに、つい、驚いて……」

「いいえ。当時も……いえ、今でも関係者はみんな、神隠しみたいだと言っています。実は防犯カメラが一部故障していたそうなのですが、それでも……神隠しなら、もしかしたら生きているかもって思えます。リナの家族や友人たちは、なおさら、そう信じたいんじゃないでしょうか。だから……私は誰にも言えないんです……」

「言えない?」

「はい。リナが白い怪物に食べられてしまったに違いないだなんて、話せるわけがありません」

―――
「リナは白い怪物に食べられた」衝撃の告白をする大学生となった穂乃花。【記事後編】では、穂乃花の「あの日の記憶」に迫る。

川奈まり子(かわな まりこ)
1967年東京生まれ。作家。怪異の体験者と場所を取材し、これまでに6,000件以上の怪異体験談を蒐集。怪談の語り部としても活動。『実話四谷怪談』(講談社)、『東京をんな語り』(角川ホラー文庫)、『八王子怪談』(竹書房怪談文庫)など著書多数。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。2025年発売の近著は『最恐物件集 家怪』(集英社文庫8月刊/解説:神永学)、『怪談屋怪談2』(笠間書院7月刊)、『一〇八怪談 隠里』(竹書房怪談文庫6月刊)、『告白怪談 そこにいる。』(河出書房新社5月刊)、『京王沿線怪談』(共著:吉田悠軌/竹書房怪談文庫4月刊)

デイリー新潮編集部

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