「老老介護殺人」に下された“執行猶予”つき判決…人気ドラマ「虎に翼」も取り上げた「親殺し」は“死刑または無期懲役”の厳罰 司法を大きく左右する“時代の変化”
温情化の傾向が認められる「親殺し」
若狭氏によると、求刑に対して実際の判決が半分になった場合、検察は控訴するかどうか協議を行う。さらに半分以下の判決が下された場合は控訴するのが基本方針だという。
果たして検察が控訴するのか、関係者の注目が集まるのは必然だ。ただ裁判員裁判が始まった当初から、介護疲れが原因の「子が親を殺す」という刑事裁判で裁判員は温情的な判決を下す傾向が認められている。
2012(平成24)年5月、東京新聞は「制度3年 市民感覚反映 裁判員 性犯罪に厳しく 最高裁調査 『理解難しい』増加」との記事を掲載した。
裁判員裁判が施行されてから3年目という節目を迎えたため、最高裁が量刑の変化などを調査し、その結果が公表された。記事の中には《介護疲れなど被告人に同情的な理由がある事件では、温情のある判決が出ている》との分析結果が紹介されている。
「かつて刑法第200条には『尊属殺人罪』が定められていました。自分もしくは配偶者の直系尊属を殺した場合、刑罰は無期懲役か死刑の二つしかなかったのです。1973年に最高裁が違憲判決を下し、1995年の改正刑法で正式に削除されました。明治、大正、そして少なくとも昭和の中期までは『子が親を殺すなんてとんでもない』は国民にとって常識でした。ところが今は介護疲れを理由に親を殺した被告に対し、裁判員は同情を示す傾向が一般的です。この変化は、法廷が世相を映し出したものと言えるかもしれません」(同・若狭氏)
「なぜ娘は実父の首を絞め続けたのか」
実は「尊属殺人罪は違憲か否か」という議論は、NHKが2024年4月から放送を開始した連続テレビ小説の「虎に翼」でも描かれている。
最高裁が違憲判決を下した際、複数の尊属殺人事件が対象だった。うち1件の事件は被告の女性が実父に凄惨な虐待を受けていたことが背景にあった。
デイリー新潮は2024年8月に「『くやしいか』と問いながら……『虎に翼』で話題『尊属殺人罪』5人の子を産まされた娘はなぜ実父の首を締め続けたのか」との記事を配信している。
小峰被告は12年間、母親の介護を続けていた。それほどの献身を見せていた娘は、なぜ母親を殺したのか。
第1回【「102歳の母親」を殺害した被告人に“執行猶予”がついた理由…“殺人犯”が刑務所に収監されない“温情判決”のウラにあった「知られざる法的手続き」】では、裁判で明らかになった小峰被告の苛酷な“介護生活”について詳細に報じている──。
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