不倫相手と暮らして6年、捨てた妻が「がん」だと聞いた…揺れる49歳夫に共に暮らす彼女が静かに告げた言葉とは
久しぶりの再会に娘は
4年ほどたったころ、娘に会いたくてたまらなくなった。足の向くまま中学校の近くをうろうろしていると、娘とばったり会った。中学生になった娘はじっと忠信さんを見つめていた。
「娘は黙っていました。ごめんと頭を下げると、『何を言ったらいいかわからない』と。『パパのことは恨んできたよ。だけどママにも問題はある』と娘ははっきり言った。いや、ママには責任はない。パパが全部悪いと言ったんですが、子どもはいろいろ見ているのかもしれない」
さらに2年後、娘から連絡があった。「ママが病気なんだけど、パパ、どうする?」と。婦人科系のがんだという。彼は熟考の末、澄恵さんにそれを伝えた。
「帰ればと、澄恵はさらりと言いました。そう言われて言葉に詰まった。『気になって考えてやっと私に言ったんでしょう? それなら帰ったほうがいいわよ』って。どうでもいいと思っているなら私には言わないはず。でも、妻をどうでもいいと思うような男なら、私は好きにならなかったけどねとも。彼女も苦悩していたと思う」
帰宅して、乃理子さんに「一緒にがんばろう」と言った。「あなたの助けなんかいらない」と言っていた妻だが、口調が気弱になっていた。
これからどうすればいいのか
あれから2年、乃理子さんの体調はすっかり回復したが、ときどき再発の恐怖に襲われるようだ。娘も息子も、無防備な笑顔を父に向けることはなく、めったに言葉も交わさなかったのだが、最近、ようやく少しずつ話すようになってきた。
「澄恵には申し訳ないことをした。澄恵と一緒に暮らしていた部屋は、今も僕が家賃を払っています。せめてそれぐらいつながっていたい。店に行ったこともありますが、彼女が仕事しづらそうなのでやめました」
そう言って彼は唇を噛んだ。彼の心は今も澄恵さんのもとにありそうだ。これからのことに話が及ぶと、彼は「考えたくないし、考えるつもりもないんです」とつぶやいた。妻はきっとよくなっていくだろう。医者も保証してくれている。それはうれしいが、再度、自分が家を出るようなことをしていいはずもない。ではこのまま飼い殺し状態なのか……。彼が考えたくないのはそのあたりのようだ。
「なるようにしかならない。そう思うことにしたんです」
さまざまな煩悩をはねのけるように彼は首を振った。
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忠信さんと2人の女性との関係が決着するのはいつになるのか、そもそも決着はありえるのか。考えることを放棄している様子をみると、女性側からのアクションで、彼らの「これから」は左右されそうだ。【記事前編】では、乃理子さんとの結婚に至るまでの忠信さんの半生を紹介している。
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