「クマ出没」で中止が相次ぐ「トレイルランニング」大会…協会トップが語る“共存”への課題 クマとの遭遇を回避する「3つの条件」とは
今年12月14日、山梨県甲府市で開催が予定されていた「第15回武田の杜トレイルランニングレース」の中止が発表された。原因はクマの出没と被害が相次いでいるためだ。トレイルランニングは舗装されていない山の中の道を走るスポーツであり、参加者とスタッフの安全を最優先したためという。
現在、クマの出没を理由に、イベントが中止になる事例が相次いでいる。青森市の浅虫温泉では、周辺でクマが目撃されたことを受け、「浅虫水族館」が行っている人気イベント「夜の水族館」の中止を決めた。マラソン大会や、アウトドアイベントを取りやめる例は、各地で続出している。
その一方で、「クマに過剰反応しすぎではないか」「十分な安全対策を行えば解決できる」という意見も出ている。自然と親しむ野外スポーツやイベントにおいて、クマとどう共存していくべきなのか。一般財団法人日本トレイルランニング協会の会長を務める福田六花氏に話を聞き、課題と対策を考えたい。【文・取材=山内貴範】
【写真】トレイルで絶対遭遇したくないツキノワグマの凍りつくような眼差し
相次いでレースが中止に
――トレイルランニングのレースが相次いで中止になっています。福田さんは、日本トレイルランニング協会の会長を務める立場から、現状をどう思っていますか。
福田:そもそも、トレイルランニングは山の中で開催されている競技です。過去にレース中にクマが出没した事例もありますし、何を隠そう私自身も7~8回はクマに遭遇しています。しかし、ヒヤッとしたことはありますが、競技の最中に人が襲われたとか、とんでもないトラブルに発展したことはありません。
このたび、甲府市内で行われるレースが中止になりました。甲府はクマが冬眠しないエリア。最近は気候の温暖化などの影響でクマが冬眠しなくなる傾向があるといわれていますが、もともと甲府周辺に生息する個体は冬眠しないのです。今回、コースの近隣の山にクマが出たのは事実ですが、コースで使っている場所では目撃情報は一例もありません。
――トレイルランニングのレース中に、クマと遭遇しないようにする方法はあるのでしょうか。
福田:クマが各地に出没してニュースを騒がせています。しかし、突然大繁殖したわけではなく、僕はもともといたクマが生息域を変えただけだと考えています。それならば、クマの生態を人間が把握して、クマの生活を脅かさないように配慮すべきでしょう。
クマも決して人間とは会いたくないはずです。クマは聴力や嗅覚、視力などは人間よりも優れています。100m以内に人間がいればまず気づいていますし、クマが避けていることも多い。山に入るときは、近くに人間がいるんだということを、クマに伝えるように心がけることが大事です。
クマ鈴などで対策を万全にする
――具体的にはどのような対策が考えられるのでしょうか。
福田:クマ鈴などで音を出したりするなど、できる対策はしっかり行うべきです。例えば、クマが多いエリアでは、レースをやる前にスタッフが山に入りますが、その際に爆竹を鳴らします。私はクラッカーを使っていますが、レース中に鉢合わせしないような対策をより強化して行うべきでしょう。
また、選手にはクマ鈴を“必携装備”にしたほうがいい。トレイルランニングでは、“これを持っていないと走ってはいけない”というものを必携装備といいます。多くのレースでクマ鈴は推奨装備なのですが、これからは必携装備にすべきだと僕は考えています。あとは、クマがよく目撃される場所ではコースを変更するのも一つの手です。
――クマ鈴は本当に効果があるのでしょうか。
福田:一定以上の効果は必ずあります。私はクマに7~8回遭遇したことがありますが、いずれもクマ鈴を持っていないときでした。また、クマが活発に動くのが夜明けと日没の前後といわれていますが、そういった時間帯に山に入るのは避けたほうがいいと思います。私はいずれも、日没前後に遭遇していますからね。
また、2~3人以上の複数人だと遭遇しにくいといわれています。実際、私が遭遇した事例も、ほぼ1人の時なのです。結局、「日没前後」「クマ鈴を持っていない」「1人」という、一番やっちゃいけないことをしているときにクマに遭っている。現在はしっかり山に入るときは、クマ鈴とクラッカーを欠かさず持っています。
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