「クマ出没」で中止が相次ぐ「トレイルランニング」大会…協会トップが語る“共存”への課題 クマとの遭遇を回避する「3つの条件」とは

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慎重論に傾きすぎるのも問題

――現在、アウトドア系のイベントも数多く中止になっているようです。クマに対して過剰反応になっているという意見もあります。

福田:私が一番危惧しているのは、世論がコロナ禍の時のような過剰反応に陥ることです。山に行くとクマがいるから危ない、それなのに山でやるレースなんてとんでもないという世論が形成されつつあります。これに同調圧力が加わると、トレイルランニングのイベントを中止せよ、という意見がますます増えてしまいます。

 最近はメディアでも、過剰にクマの報道をし過ぎているのが気になります。クマの情報を伝えるのは大事なことですが、今は漏らさずすべて伝えているような状況です。煽るような報道ばかり繰り返されると、人々は冷静な判断力を欠いてしまうので、過度な報道はいかがなものかと思います。

――おっしゃる通りですね。冷静な判断が必要だと感じます。

福田:山梨県内では先ほどの甲府のレースを含め、年末に開催されるレースが2つ中止になりました。どうしても行政が主催しているので慎重論に傾きがちです。クマに遭遇する確率をゼロにすることは無理です。やめる選択肢もあるとは思いますが、安全に開催する方法も考えるべきでしょう。

 トレイルランニングのレースでは100~1000人が山に入るので、コースにクマは滅多に来ないと思っています。危ないのはトップを独走している選手かなと。繰り返しますが、山に入る以上、ある一定の確率でクマには遭遇するので、会わないように対策をすることが大切なのです。

クマと共存する道とは

――今後、人間がクマと共存していくためにはどうすればいいのでしょうか。

福田:民家やスーパーに侵入してきたクマは危ないので、駆除されるのは仕方ないと思います。また、人間の生活に危険があるのであれば、ある程度は退治すべきです。しかしながら、根こそぎ退治すべきではありません。バランスを見ながら、人間の生活に危害が加わらないように考えながら駆除を進めるべきでしょう。

 クマをすべて駆逐すべき、という過激な考えの人も一部にいます。しかし、それをやってしまったら、間違いなくシカの個体数が増えると思います。農作物の被害は、場合によってはクマよりも大きくなる可能性もあります。

 最近はシカが増えているので、新芽を食べられてしまう例が続出しています。僕は山の中に住んでいて、庭で家庭菜園をやっていましたが、シカに食べられてしまうのでやめてしまいました。クマに関しては感情論や印象論に流されるべきではありません。動物の生態の専門家の意見を聞きながら、考えていく必要があると思います。

――福田さんの話を伺うと、クマが人里に出没する原因は複合的で、簡単に解決するのは難しそうだと思いました。

福田:クマの餌になるドングリが少ないとよく言われますが、これは私も感じています。山に入るとわかりますね。週に2~3日山に入っているのですが、ドングリがぜんぜん落ちていませんから。おそらく、今年は猛暑だったことや、地球温暖化の影響もあるでしょう。

 クマ問題を根本的に解決するのは難しいのですが、人災によって生じている部分もあることは、忘れてはいけないと思います。気候変動をもたらしているのは人間社会の行いです。そのあたりも含めて、今までの人間の行いを考え直す時期に来ているのではないでしょうか。クマは人間社会に警鐘を鳴らしていると考えています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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