「良いこと悪いこと」真犯人はコイツだ “共犯”はなぜか現場から消えた人物 “伏線”からわかったこと

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犯人はこの男

 大谷は6人の顔写真が黒く塗り潰された卒業アルバムを、掘り起こしたタイムカプセルに入れた。6人は殺害ターゲットだ。

 桜井を殺した人物は本人に警戒心を抱かせず、車椅子に乗せることが出来なくてはならない。騒がれたら犯行が失敗する恐れがある。それを踏まえると、主犯は小山隆弘である。この男には疑わしい点があまりに多い。

 第1回に武田敏生が転落死した際には米国にいたが、これは連続殺人と自分は無関係であることを印象付けるためと見る。武田殺しの実行犯は桜井ではないか。小山と桜井は22年ぶりの同窓会の前後から、連絡を取り合っていた。

 タイムカプセルを大谷に掘り起こさせる必要があったのも小山。米国にいたからである。日本にいる人間が犯人だったら、自分で掘り起こす。そのほうが、リスクが少ない。

 小山のスマホ内には武田の転落死の直後に撮られた写真が入っているが、これは桜井に送らせたのだろう。この写真があると、自分も犯人に脅されていると被害者面がしやすい。桜井の殺害動機は知りすぎているから。新しい店の資金も払わずに済む。

 第2回、小山が高木の塗装会社を訪ねた際、わざわざ自分が小6のときにつくった替え歌をうたった。殺害ターゲット6人のあだ名が歌詞に入っている。

 替え歌に登場する順番通りに武田が殺された。次に桜井の店が火事になり、中島も殺害された。高木は否が応でも替え歌の順番を意識した。

 こうなると小山は有利。どこまで殺すつもりか分からないが、殺害が容易になる。順番を守らず、相手に油断させればいい。

 替え歌が小山にとって犯行のためのツールに過ぎぬことは、4人目の死者が大谷だったことでも分かる。第6回だった。もちろん大谷の名は替え歌にない。6人連続殺人より先に殺す必要があったのだ。警察に通報する恐れを感じたからだろう。

 小山は替え歌のとおり、4番目に襲われた。ただし、これは偽装襲撃に違いない。第3回だった。

 小山が立ったまま新事業について会見中、頭上から大きな板ガラスが落ちてきた。間一髪で気づいた高木が小山を押し倒し、難を免れた。

 板ガラスが落とされる直前、誰かが高木の肩付近に何かをぶつけ、注意を促した。赤の他人がやったことではない。高木の勇気と義侠心を知っていないと、小山の命が本当に危うくなってしまう。小山の仕掛けだ。

 高木に注意喚起した人間も小山の仲間。共犯である。桜井は入院中だったから。あり得ない。大谷はパスがないから会見場に入れないだろう。あまり幸せそうでない主婦・土屋ゆき(剛力彩芽)も同じだ。

 高木の近くにいたのは猿橋の同僚記者・東雲晴香(深川麻衣)。高木が落下する板ガラスに気づいたときには、なぜか姿が見えなかった。東雲も共犯ではないか。

 気になるのは東雲も猿橋や高木たちと同じ34歳であるところ。猿橋が忘れている6人との因縁が東雲にはあるのかも知れない。

 物語を観た限り、東雲は猿橋より仕事ができる。スクープを次々と取る。だが「週刊アポロ」のシンボルとして厚遇されているのは猿橋。容姿端麗だから。ルッキズムである。東雲は心穏やかではないのではないか。

 小山にはもともと後ろ暗いところがある。猿橋が突き止めた。新規事業にかかる巨額費用もどうするのか分からない。

 第4回にもおかしな動きを見せた。ちょんまげこと引きこもりの羽立太輔(森優作)の自宅を猿橋が訪ねている際、スマホでメッセージを送った。おそらく匿名だ。

 猿橋は急に羽立宅周囲の気配をうかがった。猿橋を脅かすようなメッセージだったのか。小山は高木と一緒に「イマクニ」にいたが、メッセージを送るときだけ席を外した。

 羽立は第5回から小山の会社で働き始める。会社のパソコンを使い、鷹里小の関係者が集う掲示番「鷹里小学校の森」にアクセスした。事件を調べるためだろう。

 チャットルームに入ると、「誰一人おぼえてない」と書かれていた。羽立が「おぼえているよ、博士だよね」と打ち込むと、相手は「もしかして、ちょんまげ?」と返信してきた。言い当てられた羽立は仰天した。

 小山の立場なら、羽立のパソコンの接続先は簡単に分かる。博士は小山が成りすましているのではないか。羽立がほかの人物の名前を出したら、そちらに成りすませばいい。

 小山が成りすます第一の理由は同級生たちの記憶を曖昧にするため。それによって自分に疑いの目が向かないようにする。

 博士を名乗る人物はチャットで「ちょんまげだけだよ、あの7人組で覚えててくれたのは」と伝えてきたが、本当にグループは7人組だったのか。高木との会話で7人目がいたように誘導したのも小山である。第4回だった。

 羽立は第6回の後半、消えた。博士を名乗る人物に会いに行ったまま、帰っていない。博士が同級生か学校関係者なら、こうはならないはず。羽立は博士に成りすました小山に囚われたか、殺されたと見る。

 動機は金か、あるいは人知れぬ恨みを抱いていたからか。ノックスの十戒で真っ先に登場するルールは「犯人は物語の序盤に登場していなければならない」である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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