宮崎あおい、平手友梨奈、田中裕子…女優たちが個性を輝かせた「本にまつわる物語」といえば【晩秋の映画案内】

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高校生作家たちの共作物語

〇「小説の神様 君としか描けない物語」(2020年)

 SNS上の酷評で自信を失った高校生作家・千谷一也(佐藤大樹)。一方、同じクラスには、ヒット作を連発する小余綾詩凪(橋本環奈)がいた。ある日、編集者から2人で協力して執筆することを依頼される。反発し合いながらも共作を始めた2人は、やがて創作の苦悩や葛藤を乗り越え絆を深めていく。

 橋本環奈は従来の快活なイメージとは異なり、容赦ない平手打ちや蹴り、一也を「シッシッ」とあしらう強烈な性格が新鮮だと話題になった。本人は「詩凪は小説が好きだからこそ言ってるんだなって伝わるように心がけた」と明かしている。

 本作のように、一つのペンネームで“2人で書く”作家に注目してみよう。日本では岡嶋二人が知られている。1982年に『焦茶色のパステル』(講談社文庫)で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。以降『99%の誘拐』(同)など誘拐をテーマにした作品に定評があったが、その後コンビを解消している。

 海外ではエラリー(エラリイ)・クイーンがあまりにも有名。『ローマ帽子の謎』(出版社によって別タイトルあり)から始まる国名シリーズや『Yの悲劇』などはミステリー好きの必読書だ。共作者はいとこ同士のフレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リーで、プロットはダネイが考え執筆はリーだったという。

 クイーンにオマージュがあったのだろうか、実は本作の2人の役割もクイーンとまったく同じなのだ。詩凪がプロット担当で、一也が執筆をする。なぜそうなったのか。その理由は作品中で明かされているので、ぜひ観てほしい。

古書店主に恋する女子高生

〇「愛なのに」(2022年)

 古本屋を舞台とした映画は多くあるが、話題の河合優実が古本屋の店主に恋する女子高生を演じる作品を紹介しよう。

 古本屋の店主・多田(瀬戸康史)は、結婚を控えている昔の友人・一花(さとうほなみ)を忘れられずにいる。そんな彼の店に女子高生・岬(河合優実)が頻繁に通い、突然結婚してくれと迫る。一方、一花は婚約者・亮介(中島歩)が浮気をしていることがわかり、多田に連絡を取って思いもかけないことを依頼する。

 映画は岬が夢野久作の『少女地獄』を万引きするところから始まる。その後多田に求婚するのだが、その掴みどころがないキャラクターと、多田を恋するひたむきさがとてもキュートだ。河合は公開当時に「彼女はただ好きな人に『好き』って言いたいだけ。この作品内で“純粋の象徴”のようなキャラクターなんじゃないでしょうか」と語っている。

 一花を演じるさとうほなみは、放映中のNHK朝ドラ「ばけばけ」での遊女役が話題だ。バンド「ゲスの極み乙女」のドラマー「ほな・いこか」としても知られ、俳優業と並行して音楽活動を続けている。奔放な役が多いイメージだが、一花に共感できるところはという問いに「やられたらやり返す、という部分でしょうか(笑)。私にはない感覚です」と話している。

 舞台としての古本屋は、恋愛と相性が良いことが分かる作品だ。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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