宮崎あおい、平手友梨奈、田中裕子…女優たちが個性を輝かせた「本にまつわる物語」といえば【晩秋の映画案内】

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女子高生作家、芥川賞・直木賞を同時受賞する

〇「響 HIBIKI」(2018)

 当時「欅坂46」のメンバーだった平手友梨奈の映画初出演作。女子高生の天才作家が出版界に旋風を巻き起こす痛快作だ。

 15歳の女子高生・鮎喰響(平手)は、文芸誌「木蓮」の新人賞に応募する。作品を読んだ編集者・花井(北川景子)は、その才能に驚き響を世に出そうとする。

 響のキャラクターが強烈である。気に入らない作家や編集者は徹底的に痛めつけ、受賞会見でも暴れまくる。平手は無表情でクール、攻撃的な響を見事に自分のものにし、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。

「傑作」とか「心が震えた」と称賛される響の作品。冒頭に花井がこの原稿を読む場面が出てくるので、画面を止めて読んでみた。「獰猛な熊に、老人と村人が対峙する。老人は熊の眼にナイフを突き立てるが自分も傷つき死んでしまう」という内容だった。わずか2枚だけなのでこれだけでは判断できないが、全編を読んでみたかったと思う。

 ところで、直木賞をモチーフにした「文学賞殺人事件 大いなる助走」(1989年)という作品があるのはご存じか。直本賞(直木賞)を受賞できなかった新人作家(若き佐藤浩市)が、選考委員を殺しまくるという内容だ。配信もされているので、興味がある人は観てほしい。

 響は芥川賞・直木賞を同時受賞し、社会現象になる。実際には制度的にあり得ないことだ。しかし響の「心が震える傑作」が突如現れることも含めて、この映画は低迷する出版界へエールを送っているのだとわかる。

本棚を見ればその人がわかる

〇「いつか読書する日」(2005年)

 50歳独身の大場美奈子(田中裕子)は、長崎の町で牛乳配達をしている。階段の上には、高校時代に交際していた高梨槐多(岸辺一徳)の家があり、美奈子は毎朝牛乳箱に配達している。重い病気の槐多の妻・容子(仁科亜季子)は、ある日美奈子に、自分が死んだ後に夫と一緒になってほしいと懇願する。美奈子も槐多も30年間、お互いを思い続けていたのだ。やがて容子の死後、2人は結ばれる。だが、意外な結末が待っていた……。

 美奈子は「牛乳配達は自分の生きがい」と言い、長い階段をただひたすらに駆け上がる。その姿は「PERFECT DAYS」(2023年)で役所広司が演じたトイレ清掃人を想起させ、感動的でさえある。

 彼女の日常はシンプルだ。新聞の書籍広告を切り抜いたり、ラジオにリクエストを投稿したり(採用された曲は「雨の日と月曜日は」)。そして床から天井まで備えた棚には、びっしりと本が埋まっている。その前に座り見上げる美奈子。永井荷風、福永武彦、安部公房、翻訳ものではセイントの『透明人間の告白』、アゴタ・クリストフの『昨日』などが見える。彼女の歩んできた人生と読んできた本が重なり、圧倒される場面だ。

 田中裕子はこの時、役と同じ50歳。めったにメディアには出ない人だが、この作品のシナリオブックの中でこう語っている。「見た目は普通のおばさんだけれど、1人の人を30年間思い続ける美奈子は、普通の人ではないのかもしれないですね」と。

 この本には、その「大場美奈子さん」が自分の読んだ本を紹介するというページがあるので、何冊かあげてみよう。『チボー家の人々』『さようならコロンバス』『原寸イラストによる落葉図鑑』『アメリカの鱒釣り』『夫婦善哉』。どうだろう、彼女のことが少しだけわかった気がしただろうか。

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