もはやスポーツ観戦の熱気…粗品「チンチロ」が、作り込まれたテレビ番組より人を惹きつける理由

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擬似ギャンブル

 11月3日、さいたまスーパーアリーナで霜降り明星・粗品、シモリュウの前田龍二とシモタ、ダブルヒガシ・大東翔生が出演するライブ「チンチロ」が開催された。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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「チンチロ」は、「ギャンブル四兄弟」と呼ばれる4人が「ソシー」という架空のチップを使ってサイコロの出目で争う擬似ギャンブルを行う企画である。粗品のYouTubeチャンネルの人気企画として多くの人に愛されている。これまでにも日本武道館と横浜アリーナでライブを行ってきたが、今回は過去最大の規模だった。

 さいたまスーパーアリーナに3万人の観衆が集まり、サイコロを振る芸人たちに熱狂する。一見すると信じがたい光景だが、これは実際に起きた現実である。YouTubeから始まったちょっとしたゲーム的な企画が、なぜここまで多くの人々を魅了する巨大コンテンツへと成長したのか。

 チンチロという遊び自体のルールは極めてシンプルである。どんぶりの中にサイコロを3つ振り、出目の組み合わせで勝敗を決める。特別な技術も知識も必要ないので、誰もが平等に参加でき、誰もが結果に一喜一憂できる。この「わかりやすさ」と「平等性」がチンチロの魅力だ。複雑化する現代のエンターテインメントにおいて、観客全員が同じ視点で楽しめるコンテンツは意外なほど少ない。チンチロは、幼児から高齢者まで誰が見ても理解できる普遍性を持っている。

 YouTubeでの初期の動画では、粗品と芸人仲間たちが会議室のような場所でサイコロを振っていた。カメラワークも編集も最小限で、その素朴さが視聴者に親近感を与えた。芸人たちの素の反応、勝負に対する真剣さと悔しさ、勝ったときの純粋な喜び。これらがフィルターを通さず伝わってくることで、視聴者は「友達の家でゲームを見ているような感覚」を味わえた。テレビの作り込まれたバラエティとは異なる生々しい臨場感がそこにはあった。

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