GPSを使って40代女性をストーカーした「前新潟市議」が裁判で主張したハチャメチャな「素行調査」と「正義感」 賠償命令が出ても「金がない」と逃亡
時給1000円のアルバイトに探偵をつけて「素行調査」
素行調査に至った理由がXの陳述書に書かれているのだが、何度読み返しても意味不明だ。A子さんがFXをやっていて、周囲から「不思議ちゃん」と呼ばれていると話していたことや「何らかのサプリメントや薬を服用していること」を知ったから調査に至ったとある。
「サプリメントとは、私が勤務中、コンビニで売っていたエナジードリンク『モンスター』を飲んでいた時の話で、Xが『何飲んでいるの?』と話しかけてきたから、『これ飲むと元気が出て夜勤頑張れるんです』と答えた時のやり取りを指していると思われます。その後、Xはモンスターを私に差し入れてくれました。つまり、私がモンスターという“危ないサプリメント”を飲んで、FXにも手を出しているし、“不思議ちゃん”とも呼ばれているようだから、調べた方がいいと思い至ったと言いたかったようです」
そんな理由で時給1000円程度のバイトに対する素行調査を、探偵に高い報酬まで支払って行うコンビニオーナーなどいるだろうか。しかも、Xはオーナーである妻に内密で調査を開始し、探偵に支払った報酬を経費計上していない。
その素行調査を経て、Bさんの自宅や職場に「不倫怪文書」を送りつけた理由も聞いて呆れる。妻子のある既婚男性と探偵から報告を受け、〈倫理観にかける行為だと思い、許せなくなりました〉〈私の強い正義感は、亡くなった母の影響だと思います。曲がったことが大嫌いだった母から幼い頃より躾けられ…〉と陳述書には書かれている。
事実は、前編で伝えたようにA子さんとB氏はただの友人関係だった。
「Xは探偵が勝手にGPSをつけたとも主張したのですが、証拠として提出された探偵とのショートメッセージのやり取りの中では、私を見失ったかもしれないと報告する探偵に対し〈探知機外れたか!? か!〉とメッセージを送っていることもわかっています。また私の自宅近辺をうろついていた理由をマスコミには『買い物に行っていた』と説明していたのですが、民事裁判になると『畑を探していたから』に変わりました。私の住んでいた地域は住宅街で畑など見当たらないのですが…」
年金暮らしで貯金もなく「賠償金が支払えない」
さらに裁判の途中で、Xは被害者であるA子さんに対して「反訴」までしてきた。A子さんが地元メディアなどに起訴された件以外のことを話したことことによって名誉を毀損されたという理由だ。
当然、こんなハチャメチャな主張が法廷で受け入れられるわけがない。新潟地裁は、今年7月7日、自宅周辺のつきまといや探偵を使って尾行した行為などについてストーカー行為と認定。反訴を退けた上で、Xに対し約245万円の賠償命令を出した。Xは3年かけて争ってきたにもかかわらず控訴せず、あっさり一審判決が確定した。
だが、その後Xは「金がない」と言って、いまだ一円もA子さんに支払っていないのである。
「うんともすんとも言ってこないので、こちらの弁護士から相手側の弁護士に支払い方法について確認すると、『現在無職で年金暮らし。貯金もほとんどないので、一括での支払いはできない』『頭金なしの月額2万円の分割払いにして欲しい』と都合のいいことを言ってきた」
Xは60代後半だ。そんな条件では取りっぱぐれる可能性が高く、到底受け入れられる話ではない。
「離婚せず、妻とも同居を続けていてコンビニも普通に営業しているのだから、家族に立て替えてもらえるはずなのに『家族を巻き込みたくないから連帯保証人は立てられない』とも言うのです」
弁護士に依頼して、資産を調査したが差し押さえできるような財産は見当たらなかったという。納得いかないA子さんは何度も督促状を送ったがなしのつぶて。10月3日には、自宅を訪ね、3回インターホンを押すとXが出てきたが、
「謝りもせず、『弁護士を通してください』を繰り返すばかりで…」
こんな理不尽な話はないだろう。そもそもA子さんには非が全くない。勝手に妄想を膨らまされてストーカー被害を受け、引越しも余儀なくされた上、裁判ではメチャクチャな反論をされ、しまいに反訴までされた。弁護士費用を支払い、3年かけて賠償命令を勝ち取ったのに、一円も受け取れないのだ。
「裁判を戦っている最中は精神に異常をきたし、心療内科にも通いました。向こうは『妻は関係ない』と言っていますが、それもおかしな話です。私はコンビニの従業員として働いている間に、コンビニ運営をしている会社の取締役でもあるXに目をつけられストーカー行為をされたのです」
Xに弁護士を通して取材を申し込んだが、「取材は受けられません」との回答だった。
静岡県伊東市や群馬県前橋市の問題しかり。なぜこのようなとんでもない人たちが公職に選ばれてしまうのだろうか。
前編【GPSで行動を監視されデマの“不倫怪文書”まで…2年間ストーカー被害にあった女性が告白「犯人はバイト先のコンビニ経営者の夫で、前新潟市議でした」】では、Xがでっち上げた「不倫怪文書」や、市議の立場を利用してA子さんの経営する美容関連の店へ行った「嫌がらせ行為」などについて詳しく報じている。
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