「会社をクビになるほど忙しない」 クマハンターが嘆く実情 「出番が多くて疲れ果てている」
「朝晩土日関係なく出動しないといけない」
ヒグマの生息地として有名な北海道・知床半島を抱える羅臼町の職員で、狩猟免許を持つ田澤道広氏(66)に聞くと、
「クマを見かけたら大多数の住民は警察ではなく役場に通報します。それを受けて、私のような狩猟免許を持つガバメントハンターと、町が契約している知床財団の職員や猟友会のメンバーが出動するのです。通常3人から5人、クマの潜伏範囲が広ければ10人前後で対応しますが、人集めには結構手間がかかります」
町が把握する猟友会のメンバーは約20名いるが、
「皆さん昼間は本業の仕事をしていますからね。メンバー一人一人に私が電話をかけて“来られますか”と確認するだけで時間を取られてしまう。突然呼び出されるハンターの負担も大きいですよ。私は30年ほど前から狩猟免許を持ち、町の仕事としてやっているから慣れましたけどね。政府が対策に掲げたようにガバメントハンターを増やすなら、待遇面の改善が必要。クマが出たら朝晩土日関係なく出動しないといけませんから」(同)
“こんなに人数いらないだろ”
クマとの戦いの最前線に立つハンターには、例年以上に負担がかかっているというが、ついには彼らが“ストライキ”を起こす騒動まで発生しているのだ。
同じ北海道でも日本海側に位置する積丹(しゃこたん)町では、クマの駆除でハンターが不当な扱いを受けたとして、猟友会が1カ月強も役場からの出動要請を拒否し続けている。
この間、町内ではヒグマが小学校などに出没を続けていたが、役場はハンターに駆除を要請できていなかった。出動拒否の事実を、町は議会を通じて町民に説明していなかったことが発覚。解決に動かない役場へは爆破予告が来る始末で、今月1日からの町主催の文化祭が中止に追い込まれた。
ことの発端は9月27日、積丹町議会で副議長を務める海田一時氏(74)が、ヒグマ駆除で出動した猟友会のハンターたちとトラブルを起こしたことだった。
「あの日は、町から“海田副議長の自宅敷地内に設置された箱わなでヒグマが捕獲された。殺処分してほしい”との要請があったんです」
そう明かすのは、現場に立ち会った男性ハンター。
「駆け付けたハンター9名に対して、副議長は“こんなに人数いらないだろ”と言ったんです。それならとわれわれの仲間の一人が“これからクマを殺処分して箱わなから引っ張り出しますから、一緒にやってみませんか?”と答えたわけです」
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