妊娠で“なんとなく結婚”して20年…妻が「息苦しい」と言い出した 婚約パーティーでの密かな裏切りも見過ごしたのに
毎日が恐怖の連続だった
遼子さんは「もう生きていけない」と落ち込み、会社を休みがちになった。実さんは、友だちとして放っておくわけにいかず、かといって誰かに相談することもできず、ひとりで必死に彼女を立ち直らせようとした。その結果の「関係」であり、妊娠発覚であり、さらにその結末としての結婚となった。
「結婚なんてしたくない、しなくていい、同情されて結婚なんて嫌だと彼女は言ったんです。子どもは堕ろすとか、ひとりで産むとか迷走していました。そう言われると、『いや違う、僕がきみを好きなんだよ、僕と君の子を一緒に育てよう』とムキになって説得してしまった。若かったんですよね」
彼はそう言って苦いものを噛みしめたような表情で笑った。ただ、あの頃は毎日が恐怖の連続だったとも振り返る。
「彼女が会社に来ていないと、僕に黙って中絶したのではないかと不安になった。結婚生活に自信があったわけでも、どうしても子どもがほしいと思っていたわけでもないのに、なぜか彼女に宿った命を守らなくてはと使命感にかられた。動物としての本能なのかもしれませんね。不思議な感情が僕の中に生まれていた」
実さんが「結婚には向かない」と思っていた理由
実さんには5歳年下の弟がいる。両親が離婚したとき、彼は10歳、弟は5歳だった。そして彼は母に、弟は父に引き取られて、それきり会っていなかった。父はその後、海外へ移住したらしく、消息がわからなくなった。かわいがっていた弟がどうなったのか、彼はずっと気にしていて、のちに母に尋ねたこともあるのだが、母は「知らない」と短く答えた。
「離婚の原因も、その後の父と弟の動向も僕にはいっさい知らせてくれなかった。子どもにとって、きょうだいと離ればなれにさせられるのはつらい。せめて連絡がとれる状態にしておいてくれればよかったのに。そういう意味で、僕はいまだに両親を恨んでいます。離婚したのはかまわないけど、その後の子どもの気持ちをどうして考えてくれなかったのか」
だから結婚などしない、向いていないと決めつけていた実さんだが、自分の子への執着は、自分でも驚くほどだった。
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